【C型肝炎治療薬の偽造品販売】問題の「現金問屋」とは何者か?

2月7日、警視庁生活環境課は、C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品を販売したなどとして、いずれも住所不定・無職である加瀬敬幸容疑者(43)と妻の加瀬芳美容疑者(49)を医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕した。

容疑者らは共謀して、平成29年1月4日、東京・千代田区内の医薬品卸売業者「エール薬品」(廃業)に「ハーボニー」の偽造品のボトル2本を、定価の5~7割ほどの金額で、計160~200万円で販売。また平成28年8月と10月には、石川県金沢市の卸売業者に別のC型肝炎治療薬「ソバルディ」のボトル2本を計約100万円で無許可で販売した疑いが持たれている。

捜査関係者によると、2人はいずれも違法薬物を使用したとして広島県警に逮捕・起訴されており公判中であったが、防犯カメラの映像や携帯電話の通話履歴などから事件への関与が浮上。警視庁が逮捕状を取り、身柄の移送手続きを進めていた。両容疑者は偽造品について「販売したのは本物のハーボニーです」などと容疑を否認しているという。

「ハーボニー」とは、国内に100万人以上いるとされているC型肝炎の治療薬であり、平成27年9月に販売が始まった「新薬」である。患者は、1日1錠を12週間飲む必要があるとされており、平成28年末時点で、約7万6000人が利用しているという。「新薬」は、開発までにかかった費用が上乗せされているため、価格が高くなるものであるが、「ハーボニー」は1錠5万5000円ほどする錠剤が28錠入っているため、ボトル1本で150万円以上もする高額治療薬である。ただし、C型肝炎治療は、高額療養費制度や助成金制度があるため、高価な薬価でも、その大半は公費でまかなわれる仕組みとなっている。

今回、容疑者らが偽造品を持ち込んだとされる都内の医薬品卸売業者「エール薬品」(廃業)は〝現金問屋〟と呼ばれる業者であると、製薬・医療に詳しい専門家は話す。

「〝現金問屋〟とは、薬局や病院などから余った薬を安く買い取り、別の薬局や病院に転売する業者のことです。特に中国を中心とした海外では、日本の薬を求める人も多く、高値で再販売されているのが実情です。今回の偽造品が出回った背景としては、医薬品の管理制度が不十分であったことが挙げられます。〝現金問屋〟は、仕入れる際に許可証などによる身分確認の規定がないため、相手の身分を確認せず、販売記録にもウソの社名を記載するなどしている会社も存在します。それが、偽造品を流通させてしまった原因と言えるでしょう」

C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品については、2017年1月17日に、厚生労働省が、奈良県の薬局チェーンで偽造品の入ったボトル5本が見つかったことを発表し、明るみになった経緯がある。それ以降も、続々と偽造品についての報告が上がり、騒動となっていた。

さらに同年1月23日には、都内の「現金問屋」から偽造品9本が発見され、2月1日には、都内の「現金問屋」から新たに偽造品1本が発見されていた。その後、3月7日、奈良県と奈良市は、偽造品を調剤した薬局に対して改善措置命令を、16日には業務停止命令を出していた。3月13日には東京都と大阪府が、現金問屋計6社に改善措置命令を、4月12日には東京都が現金問屋2社に業務停止命令を出していた。ちなみに、これら全ての「現金問屋」が「エール薬品」(廃業)であったと見られている。

これだけC型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品が相次いでいる背景には、偽造品であることを見分ける難しさがあるという。

「偽造品の多くは、正規品のボトルが使用されています。基本的には捨てるものなので、知り合いなどから正規品の空のボトルをもらうことは、難しくないでしょう。そこに、市販薬のビタミン剤や風邪などの際に服用する漢方薬などを入れたりして、偽造しているようです。現金問屋から仕入れる際に、わざわざ全ての中身を確認することは現実的に出来ないので、偽造品であるかを見分けるのは難しいと言えるでしょう」(前出・専門家)

相次ぐ偽造品問題に対して、厚労省は、再発防止策を盛り込んだ改正省令(医薬品医療機器等法施行規則)を今年1月31日から施行したばかりだ。再発防止策の柱は、「取引時の身元確認の厳格化」である。改正省令では、卸売業者や薬局が医薬品を仕入れる際、販売許可証などで「相手の氏名・名称、住所・所在地、電話番号・その他の連絡先」を確認し、「ロット番号」「使用期限」なども記録に残すことを義務化した。

C型肝炎と言えば、覚醒剤などの注射を使い回しや、入れ墨・タトゥーを入れる際の針の使い回しで感染する例も多い。逮捕された容疑者らは、過去に違法薬物で逮捕されていることから、常習性が高く、周囲にC型肝炎患者がいた可能性も高い。患者にしてみれば、薬局で買った薬が、まさか〝偽造品〟だとは夢にも思わなかったであろう。

なにより、体内へ摂取するものであり、使用した患者への健康被害が懸念される。今回の改正省令により、薬品の偽造問題が根絶されることを祈るばかりである。

(文◎朝比奈ゆう)