【集団痴漢事件】逮捕された男たちの〝即興スクラム〟

今月27日、警視庁板橋署は、JR埼京線の車内で女性に集団で痴漢をしたとして、東京都豊島区池袋1丁目の職業不詳・萩原崇智容疑者(34)、大田区池上3丁目の会社員・片岡秀照容疑者(49)、荒川区西日暮里2丁目の職業不詳・細川充容疑者(43)、横浜市都筑区池辺町の会社員・斉藤祐輔容疑者(35)の4人を強制わいせつ容疑で逮捕した。

4人の容疑者らは、7月19日午後7時すぎ、埼京線の池袋―板橋駅間を走行していた快速電車の先頭車両で、都内に住む20代の女性会社員の衣服の中に手を入れるなど、共謀してわいせつな行為をした疑いが持たれている。

電車が板橋駅で停まった際、ホームで乗客の整理誘導を行っていたアルバイトの男性(19)が、電車の窓越しに女性を取り囲む4人の男性に気付き、駅員を通じて110番通報。車内の防犯カメラの映像などから4人が特定された。

調べに対し、萩原容疑者を含む3人は「周りの乗客が女性を触っていたことにムラムラして触った」などと容疑を認めており、細川容疑者は「触ろうと思ったが触れなかった」と容疑を否認しているという。

警察によると、4人に面識はなく、事件当日が初対面。一部の容疑者の携帯電話には、インターネット上の痴漢体験を告白する掲示板の閲覧履歴があったという。また、その掲示板には、〝今回、女性が被害に遭った列車の特定の車両は痴漢がしやすい〟という旨の書き込みがあり、4人がその掲示板を見て集まり同じ電車に乗車したとみているという。また、4人は常習的に痴漢を繰り返していたとし、調べを進めているという。

今年8月にも、JR埼京線の武蔵浦和駅で、数人の男たちが20代女性に集団で痴漢を行っていたというニュースが報じられている。男たちは、周囲の乗客に咎められたことで、うち1人がホームから線路上を伝い逃走した。

アダルトビデオなどで、「集団痴漢」モノは一定数のユーザーから支持を得ているが、AVにあき足らず、実際に集団痴漢に及んでしまった男たち。彼らの多くは、インターネット上の痴漢に関する掲示板などを通じて犯行に及ぶという。

試しに、ある「痴漢体験」のサイトを開いてみたが、トップ画面には「この掲示板の書き込みは全てフィクション」「疑似的体験に近づき、実際の犯罪を無くす為に存在している」「痴漢は犯罪です」といった内容の注意書きがされていた。しかし、書かれてある内容を見ていくと、電車内で痴漢行為をした体験談や、集団で痴漢をする仲間を誘うものなど、実態は「痴漢マニアたちの情報交換の場」となっていることは間違いない。書き込みの中には、具体的な路線名や混雑する区間、そして一番混雑する車両位置など、痴漢をしやすい場所を教えるものもいくつもあったのだ。

今回の事件の舞台となったJR埼京線と言えば、以前より「痴漢電車」と言われるほど痴漢が多いことで有名である。

その現状について、捜査関係者に話を聞いた。

「朝の通勤時間帯であれば、〝上り電車の最後方車両〟。夜の帰宅時間帯であれば〝下り電車の先頭車両〟。この2つの車両が、最も乗車率が高いため、痴漢被害がダントツに多い。女性にとっては、まさに〝魔の車両〟です」

今回の事件の舞台となったのも、まさに〝下り電車の先頭車両〟であった。

この車両が痴漢の舞台となる理由としては、他車両と較べても混雑度が高いことが挙げられる。理由は、新宿駅や渋谷駅などのターミナル駅で他路線への乗り換えが近くて便利であることと、板橋駅にはホームの端1カ所にしか階段がないため、そこへ一番近いことなどが挙げられる。1分1秒でも時短したいのが、朝夕の時間帯だ。そのため、この車両だけ〝超満員〟の状態ができてしまうのだ。

また、埼京線が痴漢に狙われる理由として、駅と駅の間隔が5分ほどと他の路線に比べて長いことや、ほとんどの駅で進行方向から見て右側しかドアが開かないため、身動きが取りづらいなどもあるという。痴漢にとって都合のよい条件が揃っているのである。

見ず知らずの、それも複数の男性たちに体を触られる集団痴漢。男性一人に痴漢されるだけでも怖いだろうに、それが複数となった場合、女性が味わった恐怖はいかばかりだっただろうか。

「痴漢男たちは、車両の停車位置のホームで並んでいるフリをしたり、電話で通話をしているフリをしながら、並んでいる女性を物色しています。対象が決まった痴漢は、その女性のすぐ背後に立ち、一緒に列車に乗り込み痴漢に及ぶのです。実際、出勤時間帯や帰宅時間帯のホームには、ものすごい数の痴漢がいると見ています。また、痴漢常習者ともなると、『この男も痴漢だな』とお互いがわかるようになり、言葉を交わさなくとも、結果的に複数の男たちによって〝集団痴漢〟となる場合も多いです。今も、痴漢に遭っても恐怖で声を出せない女性は少なくありません。それが複数となれば、なおさらでしょう。そういった女性心理を把握しているはずの集団痴漢をやる男性たちは、特に悪質なのです」(前出・捜査関係者)

JR埼京線では、時間帯によって女性専用車両を設けたり、2010年より車内に防犯カメラを設置したりするなど、対策を進めてきた。今回の事件でも、この車内の防犯カメラから犯人4人が特定出来たとされている。それでも被害が根絶されてはいないのが現状である。

かつて、痴漢被害に遭った女性に話を聞いた。

「朝の通勤中に痴漢に遭って、その体験がトラウマとなり、電車に乗るのが怖くなってしまいました。その結果、会社に通えなくなって、退社することになってしまいました。その会社では正社員でしたが、今は近所でアルバイトをして、ギリギリの生活を送っています」(27歳・元会社員)

こういった女性たちを少しでも減らすために、防犯カメラのさらなる増設や女性専用車両の増設、ダイヤの見直しなどが求められているのではないだろうか。

 

(文◎朝比奈ゆう)