テレビCMでおなじみの寺院がヤクザのフロント企業だった?

関東では馴染みがないかもしれないが、関西圏の方であれば、「来て見て便利な梅旧院」と言うCMを見た覚えがあるのではないだろうか。

この「梅旧院」とは、現代のニーズに合わせたビル型納骨堂「梅旧院光明殿」のことだ。土地の価格が高騰している都心部で先祖の供養ができると、全国的にも需要が高いものである。

その梅旧院を運営する「光明殿」の社長、山口幸子被告(63)が法人税法違反(脱税)容疑で逮捕、起訴されたのは今年10月中旬の話だが、この容疑に加えて「暴力団に多額の資金が流出した」と新聞メディアが報じている。

新聞報道によると、梅旧院光明殿の運営をめぐり、納骨堂に関する無価値の特許権の購入名目で暴力団側に3500万円を流出させ損害を与えたとして、大阪府警捜査4課は11月20日、背任容疑で再逮捕したという。

この特許とは、幸子容疑者の元夫で、すでに背任容疑で逮捕されている指定暴力団山口組直系吉川組組長、山口俊平容疑者(68)が出願したもの。納骨堂側が買い取った時点では失効してから約4年が経過していたが、俊平容疑者自身が購入を持ちかけ、幸子容疑者が応じていたという。

幸子容疑者は、無価値であることを認識しながら俊平容疑者に現金を供与したと、同課は判断したようだ。当時、俊平容疑者が吉川組の幹部から組長に昇格し、山口組総本部でも地位が上がった時期と重なることから、3500万円の一部が上納金として総本部に渡った疑いを持たれているという。

平成26年3月下旬、納骨壇の画面に遺影が表示される装置の特許権購入名目で3500万円を俊平容疑者に手渡した、というのが幸子容疑者の再逮捕容疑である。特許権は平成22年に失効済みだった。

つまり、暴力団組長が脱税で逮捕された元妻から特許権を名目に3500万円を受け取っていたというのが事件の概要だが、筆者が注目したいのは、すでに価値のない特許権に対して多額の資金が動いた、と言う事実である。

特許権の存続期間は、出願日から20年である。その間にその特許を使うと金銭が発生するというものだが、20年を期限に対価は発生しなくなる。ジェネリック医薬品(後発医薬品)などがその代表と言っていいだろう。

では、先述した梅旧院の件で、法的にも対価が掛からないはずの特許権に対し、なぜこのような大金が動いたのだろうか。ある暴力団組員A氏によれば、「とにかくヤクザのシノギ(仕事)は隙間産業みたいなもの」と語った。

そもそも、昨今の暴力団の資金源とは何なのか?

いま、ヤクザは法的な締め付けにより、著しく活動を制限されている。2009年ごろから施行が始まった、暴力団排除条例がそれである。かつて、手っ取り早いシノギとして知られていた覚醒剤なども厳しい取り締まりにより、入手困難な状況であるという。

「ヤクザに給料はない。けど、ヤクザをするには、所属する組織への上納金や義理事など、とにかく金がかかる。そんなヤクザからヤクザらしいシノギを奪ったら、一般社会から締め上げるしかないだろう」(A氏)

筆者が別の人物に取材したところによると、ある指定暴力団の組員に科される上納金は「うちは下の若い衆で一万円、最高幹部クラスでも10万円」だという。そのため、経済的な基盤を持たないヤクザは仕方なく覚醒剤などのクスリを扱い、それらをまかなってきたという。

だが、それも難しくなった昨今、ヤクザはどのように一般社会に入り込んでいるのか?

「過去の例では、無資格で多重債務者を弁護士に斡旋して非弁行為で逮捕された組員もいる。車の事故や事件の示談に入り込む『示談屋』に手を出す人間も多かった。昔は示談なんか、保険屋に名刺一枚渡せば、要求は通ったからね。それが、今は名刺を出したり、落とした(欠損)指を出すだけで逮捕される時代だから」

このように、暴排条例が施行された結果、2016年末の暴力団の構成員数は1万8100人(前年比2000人減)で13年連続減少。統計の始まった1958年以降、初めて2万人を割ったと警察庁は発表している。

しかし、順調に数は減らしてはいるものの、辞めた人間が正業に就いたという事例は数少ない。警察などは雇用の促進を促してはいるものの、積極的に雇用する企業は少ないからだ。

つまり、いかに法を犯すことなくシノギをかけられるかが、デキるヤクザの線引きとなっているということである。梅旧院の元夫妻らが特許権という隙間に目を付け、大金を動かしていたのには、こういったヤクザの苦境が表れているとも言えるだろう。

それまで反社会的な生活を送っていた人間を受け入れるかどうか。ヤクザによる犯罪をなくすのであれば、そういった一般社会の整備が必要となってくる。