【恐喝逮捕】「松山千春ものまねタレント」が主張した肖像権とは?

警視庁中央署は今月27日、知人女性を脅して現金を奪ったとして静岡県伊豆の国市の「千春M」の名で活動していた自称ものまねタレント、浅野正美容疑者(55)を恐喝の疑いで逮捕した。

浅野容疑者は昨年2月、自身が参加した飲み会の写真を知人女性がSNSに投稿したことに腹を立て、「肖像権の侵害だ。仕事がキャンセルになったので金を払え」と電話で脅迫。2回にわたって計13万円を銀行口座に振り込ませた疑いがもたれている。同署は10月に被害を訴える女性から相談を受け、捜査をしていた。

警察によると、浅野容疑者は歌手・松山千春さんのものまねをしていたといい、「仕事のキャンセル料として請求するつもりだった」と容疑を否認しているという。

浅野容疑者は、剃り上げた頭とあご髭を生やし、そこに黒いサングラスをかけて、本物の松山千春を彷彿させるルックスだったが、テレビなどでの大きな仕事は確認できていない。しかし、インターネットで調べたところによると、昨年11月にも交際する女性への暴行容疑で逮捕されていたことがあったようだ。

浅野容疑者に関しては「千春M」、「浅野正美」というアカウント名でFacebookなどのSNSをやっていたようで、事件を受けてネットでは「全然Mじゃないじゃん!」「MじゃなくてSだろ」という意見まで飛びかっている。さらに、逮捕当日の27日朝7時に投稿されたページのコメント欄には、「もう松山千春のものまねはしないでくさい」などといった書き込みもされている。

その浅野容疑者が主張した「肖像権の侵害」とは何なのか。

肖像権とは、簡単に説明すると「自分の肖像(写真)を勝手に撮影されたり、絵に描かれたり、加工・公開などの使用をされない権利」であり、それを主張できるという考え方である。「勝手に写真をネットにアップされた」ことを「肖像権の侵害だ」と考えるケースが多いが、場合によっては使用の差し止めや損害賠償を請求されることがあるものの、肖像権は法律で明文化されているわけではないため、侵害しただけで刑法上、罪に問われることはない。しかし、今回のように本人が芸能活動を行っているような場合は、肖像権の侵害にあたらないケースが多いという。過去に芸能人の写真について権利侵害を訴えたケースとしては、「パブリシティ権の侵害」というものがある。

これが話題となったのは、いわゆる2012年の「ピンク・レディー事件」といわれるケースで、最高裁で初めてパブリシティ権の意義及び侵害基準を判断した事例である。

これは、「ピンク・レディーdeダイエット」と題した雑誌記事で、ピンク・レディーを被写体とする14枚の写真が無断で掲載されたことが、パブリシティ権を侵害する不法行為になるとして、ピンク・レディーの2人が掲載雑誌を発行した出版社に対して、計約370万円の損害賠償を求めた事案だ。

これについては最高裁判決(最高裁2013年2月2日判決)で、「著名人らの氏名や肖像は、顧客を引きつけて商品の販売を促進する場合があり、これを独占的に利用できる権利はパブリシティ権として保護できる」との判断が出ている。ちなみに、このケースは「同誌記事は、白黒の小さな写真をダイエット法の解説記事を補足する目的で使用しており、ピンク・レディーの顧客吸引力の利用が目的ではない」として、ピンク・レディー2人の訴えは退けられた。

別の事例もある。ジャニーズ事務所の人気アイドルグループ「嵐」と「KAT-TUN」のメンバーが、無断で写真集を出されたとして出版社を訴え、損害賠償や販売差し止めを求めた事例では、最高裁は2014年8月中旬、メンバーらの請求を認め、出版社の上告を棄却している。これにより、出版社に約5400万円の支払いと出版・販売の差し止め、在庫廃棄を命じた二審の判決が確定。敗訴した出版社は2005年から、メンバーのコンサート写真などを無断で使用した写真集を12冊を販売していたというものだ。

これらの事案を見ていくと、浅野容疑者は「肖像権」の侵害を訴えているものの、「パブリシティ権」の侵害を訴える方が妥当だったのではないかとの見方も出ている。

しかし、知名度を上げることを考えた場合、SNSに写真をアップされて拡散していったほうが、タレントの浅野容疑者にとってはメリットが多かったのではないだろうか。どちらにせよ、逮捕されたことで露出も増えたことから、結果オーライなのだろうか。

(文◎朝比奈ゆう)