〝死の収容所〟は禁止? ポーランド「ホロコースト法」に批判殺到

 1939年に始まった第二次世界大戦の爪痕は、70年以上経った今でも根深いものがあるようだ。日本でもA級戦犯が合祀された靖国神社の参拝をめぐる問題は常々話題となっているし、ドイツにおいてはナチスのシンボルである「鉤十字」などを芸術や学問の分野以外で使用することが法律で禁じられているように、様々な分野において今も尾を引いているのが現状だ。

 そんな中、ドイツの隣国ポーランドにおいても、「戦争の爪痕を残すような法律」が制定され、話題となっている。

 CNNが9日に報じたところによれば、今月6日にポーランド大統領であるアンジェイ・ドゥダの署名がなされ、同国において制定された「ホロコースト法」をめぐり、大きな混乱が起きているという。この法律は、ナチス時代のドイツが行った「ホロコースト」と言われるユダヤ人の大量虐殺について、当時ナチスに占領されていた収容所があるアウシュビッツを〝ポーランドの死の収容所〟と称することを禁止するなど、国として公式に加担したという事を公の場で批判することを違法とするものである。これはイスラエルやフランス、アメリカなどから批判を受けていた。

 この法律について、ポーランドのユダヤ教コミュニティーの指導者であるマイケル・シュードリッヒは、「法律を取り巻く透明性が欠如しており、それが事実の歪曲に繋がっている」と指摘。さらに、「多くのポーランド人にとって、やっていないことを〝ポーランドの死の収容所〟と言われて批判されることは痛みを伴うものだろう」「やっていないことで非難されることに怒りを覚えるということは理解できる。しかし、この法案が制定され、公に説明されたことが不十分であることもまた確かだ」と声明を発表している。

 これらの批判に対し、ポーランドの外務大臣であるバルトス・シチョクッキは、「これは歴史を修正することを意味するのではなく、ホロコーストに関する真実を守るためのものだ」「ポーランドの国家や国民がホロコーストの責任を負っていると言われた時、彼らは実際の加害者の責任を軽減していると我々は認識せざるを得ない。これはホロコーストの否定の一つの方法でもあり、我々はそれと対峙し、イスラエルやほかの国々と友にホロコーストの真実を守るために戦うだろう」と声明を発表。新法が歴史修正をするものではないと説明している。

 ポーランドにおいては、第二次世界大戦が勃発する前は350万人のユダヤ人が暮らしていたが、終戦時点で生き残っていたのはわずか10%であると言われている。一方で、エルサレムのホロコースト記念センターによれば、非ユダヤ系ポーランド人の助けにより、3万から3万5000人のポーランド系ユダヤ人が救われたとされているのも事実である。

 この法律は、保守系とされる与党「法と正義」が、愛国心を煽ることで国民の支持を得ようとする中から生まれたものであるというのが世界的な評価のようである。果たして、この法律がどのように運用されていくのかは現時点では分からないが、戦時中に残された禍根が、今もなお愛国心を煽るツールとして機能するほどにポーランド国民のトラウマとなっていることは事実なようだ。

(文◎コリス東条)