現金強奪、薬物横流し…犯罪集団に堕ちた米国エリート警察官の末路

 アメリカの東海岸、メリーランド州にある港湾都市で、人口およそ64万人のボルチモア。ここはかつて日本人メジャーリーガーとして上原浩治(前シカゴ・カブス)や和田毅(現ソフトバンク・ホークス)などが所属したボルチモア・オリオールズがあることで一部には有名だが、かたや、以前よりスラム街が発展し、治安が悪いことでも知られている都市である。
 そんなネガティブな意味で近年もっとも話題となったのは、警察官による強権発動という、日本では想像しがたい事態であった。

 ボルチモアでは2015年4月の段階で、現地の警察が「強権手法を用いた」と問題視され、訴訟に至った例が2011年から2015年の間で100件以上にのぼっているという。
 中でも、大きく問題視されたのが、2015年に発生した、黒人男性の護送中の死亡事件だ。これは、現地の警察に拘束された黒人男性が、護送中に負傷した後に死亡した事件である。この事件の後には、現地で黒人を中心とした住民によるデモが起こり、それがアメリカ全土に広がるなど、こうした警察関係のネガティブなニュースに事欠かない地域である。
 そんなボルチモア周辺で、再び警察による前代未聞の不祥事が起き、批判を集めている。

 BBCが13日に伝えたところによると、ボルチモアの警察官2人が市民から強奪するなどの不祥事を起こし、有罪判決を受けたという。有罪判決を受けたのは、ダニエル・ハーシルとマーカス・タイラーという2人の警察官。彼らは不法に所持された銃器を押収することを任命されたGTTF(Gun Trace Task Force)というチームに属するエリート警察官だったという。
 そんな彼らだが、特別に与えられた権利を悪用し、マスクを着用しての現金や銃の強盗や金庫破り、さらにはキロ単位での薬物の横流しなどを行い、強盗や不正売買の容疑で逮捕されていた。この2人以外のGTTFのメンバーも1人を除いて昨年の3月に逮捕され、起訴されているという。

 この一連の事件の被害額は数十万ドル(数千万円)に上り、この腐敗事件に関連して、今回逮捕されたハーシルとタイラーの上司であるウェイン・ジェンキンスが、理由もなくバックパッカーを職務質問したり、彼が「ドープ・ボーイ・カーズ(薬物中毒者の車)」と呼んでいた特定の車種について、理由もなく車を止めさせるなどの所業を行っていたようだ。さらに、GTTF全体が偽りの捜査報告書の提出、あるいは令状なしの家宅捜索などの違法捜査を行っていたことも明らかになり、それにより数千にのぼる事件が影響を受けている可能性があるという。
 今回の判決を受け、ボルチモア警察本部長であるダリル・デ・ソウザは、「法執行機関で起きた最も恐ろしく卑劣な行為」が裁判で明らかにされたことに注目しているとコメント。さらに、「我々は、地域の信頼と尊敬を取り戻すべく動いている。今回の件はそのプロセスの一つになるだろう」と述べている。

 この件について、ネット上の外国人たちの間では、「組織の中の腐ったリンゴだな」「狂っている」と犯人たちを批判する声が圧倒的に多い。しかし、中には「これはボルチモアの警官の地域社会の関係改善のためのマラソンの最初の100フィートのようなものだ」と、今後のボルチモア警察の浄化に期待する声、さらには「ボルチモアは実際にはそれほど悪いところではない」という現地住民だと思われる声なども散見されている。本来正義を執行するはずの警察のチームが、裏で数十万ドルに及ぶ不法な利益を上げる犯罪集団だったというこの事件の衝撃はかなり大きいものだったのかもしれない。

 日本においても、昨年6月に福岡県警の警察官が妻を殺した容疑で逮捕されるなど、警官個人による不祥事は後を絶たない。しかし、こうした何かしらのチームが一丸となって罪を犯すという傾向の犯罪は、おそらく過去に例がないだろう。日本の警官たちの倫理観に感謝をしつつ、これからもこうした犯罪を起こさないことを節に願うばかりである。

(文◎コリス東条)