【潜入・大阪西成地区】「日本三大ドヤ街」に数えられた街の今

先月29日午後11時45分ごろ、大阪市西成区山王の路上で、所持品を奪われたとみられる20代くらいの男性が、逃げる乗用車にしがみついたまま約20メートルも引きずられ、頭の骨を折るなどの重傷を負うという事件が発生。その後、大阪府警西成署は強盗殺人未遂容疑で捜査している。

同署によると、重傷を負った男性が「泥棒」と叫びながら追いかけていた男が、近くに停まっていた車を奪って逃走。男性は急発進した車の前に立ちはだかり、窓にしがみついたものの、そのまま引きずられた後に振り落とされ、路面に叩き付けられたという。病院搬送時、その男性には意識があったという。

車は黒っぽいセダンタイプで、逃走した男は身長約170センチの細身で白の上着と黒い帽子、白いマスクを着用していたと、産経新聞が報じている。

そしてこの事件は、別のメディアでは「シノギ屋の犯行ではないか?」という推測も掲載されているのだ。

ここに登場する「シノギ屋」とは何なのか?

一般では聞きなれない言葉であるが、簡単に説明すると、この西成一帯で年末年始に発生する、荒っぽい手口のひったくり、強盗犯の総称である。

この西成区山王という地域は、かの有名な飛田新地という「ちょんの間(本番のできる風俗店)」があることで知られる一帯である。ここの最低料金は、だいたい1万円。つまり、ここ周辺を遊び目的で歩く人間は、それ以上の現金を持ち歩いていると考えて間違いないため、金欲しさで強盗する事件が後を絶たないのである。

しかし、狙われるのは、この山王地域だけではない。道路を挟んだ日本最大の労働者街である「あいりん地区」でも、最近こういった事件が多発していたのだ。今回の事件は、被害者が追いかけて抵抗したため強盗殺人未遂事件に発展したが、もしおとなしくひったくられていれば、ただの窃盗罪に変わっていた可能性もあるのだ。

これまで、殺人未遂事件、傷害事件が多発してきたあいりん地区だが、いまこの街に様々な変化があるという。先日、朝日新聞に、このあいりん地区に関する話題が掲載されていたので、以下に一部を引用させていただく。

<日雇い労働者が多い「日本三大ドヤ街」の一つ、大阪の「あいりん地区」周辺が変貌しそうだ。(※筆者註 三大ドヤ街とは他に、東京の山谷、横浜の寿町がある)

これまで近寄りにくいイメージのあった街が、大阪を訪れる外国人客の増加を受け、南海電気鉄道が新たに交流施設をつくり、星野リゾートもホテルを開業する計画だ。>

南海電鉄は2019年9月、同地区の最寄りとなる新今宮駅近くで、ゲストハウスを併設した観光客向けの交流施設を開業させる。この施設は、大阪市から約4800平方メートルの敷地を1億6000万円で購入して建設。日本で働きたい外国人と日本企業とのマッチング拠点となるオフィス空間を備え、ゲストハウスや飲食店、カフェなども入るという。

あいりん地区は、関西国際空港からもアクセスしやすく、さらに大阪・ミナミの繁華街や通天閣のある「新世界」からも近いため、訪日客にとっての人気スポットになりつつある。

これに便乗するかたちで、宿泊施設なども相次いで誕生していて、訪日客向けのツアーを手がけるベンチャー企業による100室あるホテルが今年4月にも開業しており、ほかにもホテルが建造されている。

かつて、あいりん地区の年末年始といえば、年末には年金や生活保護費が支給されて一瞬だけ懐の暖まった人間がウキウキして歩き、それをひったくるのは、慣れた窃盗犯であれば容易かったであろう。それを象徴するように、街にはひったくり注意の看板が多く立てられていたものだった。

それが、新しいホテルやビルの建設にともない、街中の至るところに防犯カメラが設置され、お上も犯罪抑止に必死のようだ。そのおかげか、街の治安はかなり改善され、これまでは夜中になっても酔っぱらいの往来が絶えなかったが、現在では閑散としてしまっている。先日、筆者はこの一帯を歩いたが、バックパッカーが多く歩き、表通りには外国人向けのバーなどが新たに建ち並んでいたのであった。

このように、大手資本、外資系が入ったことで、街は変わった。今回の荒っぽいシノギ屋が最後の出現となることを祈っている。