ぼったくり・昏睡強盗…「客引き」のグループ間抗争で10人逮捕

東京都内で指折りの歓楽街、台東区上野を拠点とする風俗店の客引きグループ同士が乱闘や報復行為のための暴行を繰り返していたとして、自称・自営業の中村悟志容疑者(42)と自称・無職の山名大介容疑者(38)ら元客引きの男10人が、暴力行為等処罰法違反の疑いで警視庁に逮捕された。

捜査関係者によると、逮捕された10人は、2015年5月に客引きをめぐって、中村悟志容疑者のグループの1人が山名容疑者のグループをからかったことなどから乱闘に発展。上野の路上で互いに顔を殴ったり、腹を蹴ったりするなどの暴行を加えた疑いが持たれている。10人はその後も乱闘行為をやめず、同年から2016年にかけて、相手グループのメンバーに硫酸をかけるなど、互いに報復行為を繰り返していたとみられている。

調べに対し、中村悟志容疑者は容疑を認めており、山名大介容疑者は「後輩がからまれていることを知って助けに行っただけです」などと供述しているという。警視庁は、それぞれのグループの余罪についても調べているという。

かつて〝北の玄関口〟と言われた上野だが、新宿・歌舞伎町の浄化作戦が始まって以降は、都内屈指の歓楽街として知られている。キャバクラや性風俗店のほか、フィリピン、ロシア、タイなどの外国人ホステスクラブなど、あらゆるジャンルの飲食店が点在し、まるで20年前の歌舞伎町のような状態が未だに続いているのだ。中でも、その中心部に当たる仲町通り周辺は現在も客引きが多く立ち、男性が夜の時間帯に歩けば、最低でも10人以上の客引きに声をかけられるような状況が続いている。

そもそも「客引き」とは、路上で通行人に声をかけるなどして、契約している風俗店やキャバクラ、居酒屋などに客を勧誘する人のことだ。勧誘した客が店を利用することで「紹介料」としてバックマージンを受け取ったり、客が店に使った金額の一定割合を報酬としてしてもらうなどの仕組みとなっている。しかし、その紹介料目当てにしつこい勧誘をする客引きが多いなどの理由から、多くの歓楽街では客引き行為が条例により禁止されている。上野の繁華街や、同じく客引きの多い湯島周辺にまたがる東京都台東区と文京区は、2017年、客引き行為に対する取り締まりを独自に強化する条例を制定した。時間帯を問わず客引き行為を全面的に禁止し、悪質な業者には5万円以下の過料を科し、店舗名などを区のホームページで公表できるようにするなどしているのだ。

しかし、実際には、警察などによる客引きの取り締まりはあまり行われていない。「複数の客引きグループが混在している現状がある」と話すのは、スカウト・客引き問題に詳しいジャーナリスト・竹村明氏である。

「客引きは、勧誘した客を連れて行く店を増やす営業努力も重要であり、そのためにもグループを作って活動しています。しかし、上野や歌舞伎町など都下屈指の繁華街では、複数の客引きグループが混在しており、トラブルも多いのが実態です」

また、客引きは暴力団の資金源になっているだけでなく、悪質な店への勧誘するケースも多いと警鐘を鳴らす。

「客引きたちの立つ場所については、地元の暴力団によって厳密に仕切られており、客引きグループは〝ショバ代〟として暴力団に一定金額を納めるなど、客引き行為が暴力団の資金源となっている実態があります。また、湯島地区では酔っ払い客を狙った〝昏睡強盗目的〟の客引きも横行しているといます。睡眠薬など入れたり、焼酎のウォッカ割りといった強い客を提供し、客を泥酔させた上、コンビニのATMでお金を下ろさせて、それを騙し取る店に勧誘するのです。そうした悪質な客引きも存在するため、客引きには付いていかないことが大事です」(前出・竹村氏)

そもそも違法行為である客引き行為をしているうえに、悪質な場合にはぼったくり店や昏睡強盗目的の店に連れていくこともある客引きたち。今回のグループ間のトラブルでは、相手の顔に硫酸をかけるなどしていることからも、そのタチの悪さが表れていると言えるだろう。とにかく、客引きとは関わらない方が賢明と言えるだろう。

(文◎朝比奈ゆう)