【暴力団の資金源?】風俗情報誌をめぐるトラブルの裏側

風俗情報誌のトラブルによって、指定暴力団六代目山口組の最高幹部を含む10人が強要の疑いで静岡県警により逮捕されたのは、1月22日のことだ。

逮捕されたのは、指定暴力団六代目山口組系六代目清水一家総長、高木康男容疑者(69)と、住所不定の会社役員、杉本悦弘容疑者(49)ら男女10人。彼らは一昨年の秋ごろから冬にかけて、静岡市内の繁華街で無料配布している風俗情報誌の発行権を持つ飲食店経営者の男性(50)を呼び出し、発行権を返還するよう求めた疑いが持たれている。その後、容疑者らは処分保留で釈放されたものの、捜査当局は今後も任意で捜査を継続すると発表している。

杉本容疑者は、風俗情報誌や風俗案内所の利益から毎月百数十万円をあいさつ料として暴力団に払っていたが、発行権が男性に移ったことで、支払いが止まっていた。

この件に関して、前出の組織とは別の六代目山口組系の二次団体幹部も、後に出頭し逮捕されている。

某繁華街の風俗案内所(撮影◎筆者)

かつて都心部・地方の歓楽街では、どの街にもその都道府県の情報を網羅した独自の風俗情報誌がコンビニ・書店の店頭に置かれていた。それが近年、大手書店ではなかなか見掛けなくなり、昨今では無料配布されるようになっても下火になっていたのは確かなようだ。

そんな風俗情報誌と六代目山口組の最高幹部といったヤクザが結びつくのは、何故なのか?

「新しいミカジメになっていたんですよ」

そう風俗情報誌の裏側を明かすのは、大阪で風俗誌の運営に関わっていたA氏である。ちなみに、ミカジメとは、一般の人が暴力団・ヤクザに払う守り代、縄張り代のことである。

「これまでは〝挨拶料〟の他に、〝おしぼり〟や〝絵画・植木のレンタル〟などで、割に合わない対価を払ってきました。それが暴力団排除条例が施行されたことで、ヤクザに支払われないケースが出て来た。そのため、形を変えて〝広告料〟としてミカジメを払っているのです。毎月キャバクラで3万円、風俗店なら5万円といった割に合わないミカジメを払うのであれば、10万円でもいいから、広告の掲載という大義名分があるだけ、相手にもメリットがあるんです。いかに相手にお金を払わせるように出来るかが大事ですから」(A氏)

さらに説明を加えると、A氏が関わっていた風俗誌は、5年前の段階で発行部数5000部程度だったという。しかし、この権利に対してヤクザから横やりが入り、かすめ取られるようになったという。

毎月、数百万円単位の広告料が入るファッション誌などは、雑誌自体が売れなくとも、広告料だけで潤うこともあるという。しかし、各地域でバラまかれる風俗情報誌は、基本的に無料配布である。よほどの広告収入でもない限り、出版不況と言われるいま現在、刊行を続けるのは不可能であろう。では、風俗情報誌のカラクリについて、現在もある地域の風俗情報誌に広告を出している風俗店店長のB氏は、このように説明してくれた。

「小枠、つまり1ページの6分の1のスペースで、『3万円から』というのが相場でした。定価はありません。お店としては宣伝になるので、なるべく本の前の方に掲載してもらいたい。ですが、そんなところに大きく1ページを掲載するには、最低でも30万円は必要です。もしくは、そこの発行元と、より〝近い関係〟にならないと不可能なんです」

印刷代などの諸費用は、1ページ1〜2万円程度。さらにデザイン料がページあたり数千円必要だが、使う宣材写真や原稿などは広告を載せたい風俗店が作るために必要ない。前出のA氏の話では、掲載店舗は最低でも100店舗はあったため、諸経費を引いた小さな冊子で1回発行するたびに300万円は手元に残っていたと話す。

その売り上げの半分ほどを、ヤクザに上納していたとA氏は話す。

しかし、出版不況と言われる昨今、なぜ風俗店はこのようにこぞって広告を出そうとするのだろうか。暴力団事情に詳しいライターの花田庚彦氏に話を聞いた。

「風俗店はホームページ毎日更新するよりも、風俗情報誌に広告を出した方が、客からの信用度が高くなります。『優良店』の肩書、お墨付き欲しさに広告を出すのです。昔で言えば、組の代紋を店に飾って、『ここは〇〇組が面倒を見ている』という保証のようなものと変わらない、この仕組みは今も昔も同じ。また、大手風俗サイトもやはり暴力団関係者が運営しているため、彼らにとって大きな資金源となっています。一つのバナー広告に、巨額の金銭が動いている」

さらに、2006年頃から施行された「風俗案内所規制条例」の存在も大きいという。この条例の存在によって風俗案内所が閑散としてしまい、風俗店の情報を得たい客が風俗情報誌に戻って来ているのだ。

「風俗案内所規制条例は、都道府県条例であるため、各地域によって変わるが、主な規制は案内所への客引きの禁止、外から見える場所への風俗嬢の写真の掲載禁止など多彩にわたる。これにより、案内所が客を待つだけのシステムとなってしまったのは大きい」(前出・花田氏)

このように、風俗業界と暴力団関係者との蜜月は、我々が想像する以上に深いものがありそうだ。

では最後に、風俗店を利用する場合、何を利用するのが最善なのだろうか? 前出の風俗店店長B氏は、このような説明をした。

「毎日、真面目にHPを更新している店、それも業者に頼んでいるような見栄えのいいものではなく、余計な経費を掛けずに、自分たちで更新しているようなHPを持つ店がいいでしょう。まあ、いちばん信用できるのは、やはり古くから続いている店、それも激戦区で生き残っている店かもしれません」

ヤクザたちが風俗情報誌の発行に執拗に絡む理由は、いわば利権であり、つまりネットでも紙媒体でも、合法的に風俗業者から集金できるシステムが構築されていることを表している。風俗産業の広告の見直し、もしくは法改正などがされない限り、今後もこうしたトラブルは続いていくのだろう。

(文◎RNO編集部)