ベトナム人の文書偽造事件 〝悪徳ブローカー〟に借金を背負わされ…

 警視庁は今月21日、自宅のパソコンで偽の学生証などを作って、不法滞在しているベトナム人に密売していたとして、埼玉県上尾市に住む無職でベトナム国籍のレ・ミン・ホアン容疑者(24)ら男2人を、有印私文書偽造などの疑いで逮捕した。

 レ・ミン・ホアン容疑者らは、2017年8月、上尾市の自宅アパートで、パソコンやプリンターを使い、ベトナム国籍で20代男性名義の学生証を偽造した疑いが持たれている。

 捜査関係者などによると、レ・ミン・ホアン容疑者は他にも、SNSで「皆さんの各種書類を作ります」などと客を募り、偽造在留カードの注文を受けたり、日本語学校の学生証や保険証を偽造したりしていたという。これまで不法滞在をしているベトナム人を中心に約500人に販売し、昨年4月からの9カ月間で、およそ500万円を売り上げていたといい、偽の学生証などを購入したベトナム人の男は、その学生証で身分を偽り、コンビニ店で働いていたという。

 レ・ミン・ホアン容疑者は調べに対し、「偽造した学生証を1枚5000円で販売した」「偽造した学生証を作ったことは間違えない」などと容疑を認めているという。

 近年、訪日留学生は増加の一途をたどっているが、ここ10年で20倍以上に急増しているのが、ベトナム人留学生である。独立行政法人日本学生支援機構の平成29年度外国人留学生在籍状況調査結果によると、出身国別留学生の数は、中国に次いでベトナムが第2位(61,671人)となっている。

 それに伴い、ベトナム人による犯罪も急増している。国籍別の刑法犯検挙状況を見てみると、人員数では中国に次いで第2位の1475人。検挙件数では、これまで最多を記録してきた中国を抜いて、第1位の2556件を記録しトップに躍り出ている(警察庁刑事局組織犯罪対策部 来日外国人犯罪の検挙状況より)。

 外国人犯罪事情に詳しいジャーナリストの竹村明氏によると、これらの背景には「多額の借金を背負っている現状がある」と話す。

「検挙されたベトナム人のおよそ半数は、日本語学校などに通う留学生です。多くは、現地の留学斡旋業者やブローカーに対して、留学費用などを借金する形で日本に入国しています。中には、違法な金利を設定している悪質な業者も存在するため、留学生たちは学校に通いながら、多額の借金を返済するために、昼夜問わずアルバイトをしているのです。その結果、学業がおろそかになり、出席率が悪いことなどから留学ビザの更新が出来ず、オーバーステイ(不法滞在)になる学生が多い現状があります」

 しかし、それでも留学生たちにのしかかった多額の借金は消えないため、犯罪に手を染めてしまうケースが後を絶たないという。

「とにかく彼らは、身分を偽ってでも日本に滞在し、少しでも稼いで借金の返済をしなければなりません。アルバイト先に、在留資格があることを偽るために、また、警察官などに職務質問された時のために、偽造証明書の需要は多いと考えられます。他にも、そうした借金苦や生活苦から、万引きをする学生も増えています」(前出・竹村氏)

 夢と希望を持ってきたはずの日本で、まさか犯罪に手を染める結果となってしまうとは、日本人としても心が痛い。背景には、現地の悪質ブローカーの存在や、適切とは言えない留学システムなど、様々な問題が潜んでいる。そうした現状が一刻も早く改善され、留学生たちが学業に励める日々が来ることを切に願う。

(文◎朝比奈ゆう)