【10億円の支払い求め提訴】オウム真理教は今どうなっている?

 今月23日、オウム真理教による地下鉄サリン事件(1995年)などの被害者への支払いが滞っているとして、教団の破産管財人から債権を譲り受けた「オウム真理教犯罪被害者支援機構」(理事長・宇都宮健児弁護士)は、後継団体「Aleph(アレフ)」に対し、約10億5000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしたことを明らかにした。

 同機構は、賠償金を被害者らに配当する事業をしており、「アレフは十分な資産を持ちながら、賠償を支払わない」と主張している。

 オウム真理教は96年3月の破産と共に、約1200人の事件被害者とその遺族に対して、約38億円にのぼる支払い義務を負っていた。教団の破産管財人は、教団の財産を処分するなどして一部を配当したが、2009年の破産手続き終了までに支払われたのはおよそ4割の約15億4000万円で、約22億円が未払いだった。その債権を譲り受けた機構は12年、支払い方法の協議を求め、アレフを相手にした調停を申請。しかし今年1月に不成立となったことから、提訴に踏み切ったという。

 公安調査庁はアレフの保有資産について、昨年時点で約10億円に上るとみている。宇都宮理事長は「後継団体が活動を続けていることで、被害者や遺族の感情を傷つけている。賠償金を支払わせることで活動を規制できれば」と話した。

 麻原彰晃こと松本智津夫・死刑囚を教祖として84年に設立されたオウム真理教は、95年3月20日、平成の犯罪史上最悪とも言われた「地下鉄サリン事件」を起こしたことで知られている。これは、通勤ラッシュピークの午前8時過ぎ、地下鉄の電車内で猛毒神経ガス〝サリン〟を撒き、乗客や駅員ら13人が死亡し、負傷者は約6300人にのぼった事件である。発生から23年近くが経過した今も、後遺症苦しむ人も少なくない。

 その後、オウム真理教の教団構成員や信者はどこへいったのかーー。そして、後継団体「アレフ」とは? それについては、知らない人も多いだろうから、説明しておこう。

 オウム真理教という名前の宗教団体は、96年1月に宗教法人としての法人格を失ったが、活動は継続されていた。その後00年2月に行われた破産手続きと共に消滅。同時に、新たに宗教団体「アレフ」が設立され、教義や信者の一部が引き継がれた。「アレフ」は後に「Aleph」と改称、また07年5月に上祐史浩幹部らの脱麻原派が分派し、別の仏教哲学サークル「ひかりの輪」を設立した。さらに15年1月以降、Aleph内部の意見対立により信者約30人が分派して新たな団体を立ち上げ、金沢市などで活動をしている。

 公安調査庁は両団体について、〝オウム真理教の教義を広め、これを実現するとの共同目的を有しており、麻原の意思に従い、また、麻原の意思を推し量りながら、組織運営に係る決定を行って活動している〟との認識を示している。また、3団体の拠点は15都道府県に計34施設あり、国内における信者数は2016年11月末時点で1650人、資産額は2016年10月末時点で約9億1000万円にのぼるという。

 今回、損害賠償の訴訟相手が『アレフ』である点については、本誌解説員でジャーナリストの竹村明氏は次のように解説する。

「『アレフ』は賠償金を払う十分な資産も持っているとされます。未払いとなっている約22億円の債権を譲り受けた『オウム真理教犯罪被害者支援機構』は12年、支払い方法の協議を求め、アレフを相手にした調停を申請したが、今年1月に不成立となったことから、提訴に踏み切ったのです。一方、『ひかりの輪』は、「オウム真理教犯罪被害者支援機構」と賠償に関する合意が成立し、支援機構に対しておよそ3000万円が支払われています」

 日本には信仰の自由があるため直ちに否定することはできないが、これだけの事件を起こした団体が今も全国で活動を続け、新たに入信する者も少なくないのが実情だ。

(文◎朝比奈ゆう)