【民泊女性不明事件】猟奇殺人事件の舞台となった「民泊の闇」

 行方不明となっていた兵庫県三田市の女性会社員(27)を、アメリカ国籍の男・バイラクタル・エフゲニー・ヴァシリエヴィチ容疑者が民泊用マンションの一室に閉じ込め監禁容疑で逮捕された事件で、今月25日に新たな進展があった。県警は、大阪府島本町と京都市山科区の山中で人の胴体や両腕、両脚を発見したと発表したのだ。

 まず、事件の経緯を振り返ってみよう。

 今月16日、先にあげた兵庫県三田市の女性会社員が行方不明となった。翌17日午後、兵庫県姫路市内に住む女性の母親が「会社を欠勤しており、連絡も取れない」と兵庫県警に行方不明者届を提出。その後の兵庫県警の捜査により、女性会社員は行方不明となる前日の15日、勤務先を退社した後、無料通信アプリLINEでヴァシリエヴィチ容疑者と英語でやりとりをし、SNSの写真共有アプリ「インスタグラム」に「JAY(ジェイ)に会う」という内容のコメントを掲載していたことが判明した。

 大阪府大阪市の森ノ宮駅周辺の防犯カメラには、女性会社員がヴァシリエヴィチ容疑者と並んで歩く姿が映っており、2人は16日午前0時頃、同駅から約400メートル東にある、「民泊」として使われているマンションに入室したことが確認された。18日には、ヴァシリエヴィチ容疑者が1人で大きなバッグを持ってマンションを出る映像が映っていたものの、女性が出る様子は確認されていなかった。

 兵庫県警は22日、女性を大阪市東成区にあるマンションの一室に閉じ込めたとして、ヴァシリエヴィチ容疑者(26)を監禁の容疑で逮捕。逮捕された場所は、奈良県の民泊施設の近くだった。

 アメリカ・ニューヨーク在住のヴァシリエヴィチ容疑者は、今年1月下旬、関西空港から滞在90日以内の観光目的で入国。大阪市内の民泊には今月12日頃から宿泊し、約1週間の予約を入れていたという。ヴァシリエヴィチ容疑者は、女性会社員とSNSを通じて知り合ったとみられており、調べに対して「分かりません」と容疑を否認をしていた。

 県警は今月24日、ヴァシリエヴィチ容疑者が予約していた大阪市東成区にある民泊用マンションの一室を捜査したところ、スーツケースに入った女性会社員の頭部が見つかったと発表。ヴァシリエヴィチ容疑者は、「マンションで一緒にいた女性を遺棄した」と供述しており、県警はその供述に基づき、遺体を捜索していた。

 そして今月25日、大阪府島本町と京都市山科区の山中で、人間の胴体や両腕、両脚を発見したのだ。胴体は島本町の山中で地面に放置されいたようで、両腕はそこから600~700メートル離れた場所に、土をかぶせた状態で発見された。両脚は山科区の山中で、右脚と左脚が約5メートルの間隔で放置されていたという。女性の所持品は見つかっていないものの、県警は、行方不明となっていた女性会社員の遺体とみて身元確認を進めており、ヴァシリエヴィチ容疑者を死体遺棄と死体損壊の疑いで再逮捕する方針だ。

 では、今回被害者女性が監禁された〝民泊〟施設とは何なのか? 〝民泊〟とは、旅行者などが、一般の民家に泊まることを指す。元はと言えば、現代のように交通機関や宿泊施設が整備されていなかった時代、見知らぬ人を無償で自宅に泊めたことから始まり、食事などを提供することも珍しくはなかった。しかし、時代が変わると共に、このような行為自体が消滅していく。

 しかし、海外からの観光客が急増している近年、ホテル建設などが間に合わなかったこともあり、自治体や企業が「都会に住む人に対して農家や漁村での生活体験をしてもらう」といった町おこし活動の一環として、田舎体験型〝民泊〟サービスの提供が広がり始めていた。さらに最近では、宿泊希望者と貸出希望者をつなぐ、「Airbnb」のような仲介サイトが複数登場したことで、外国人観光客や一般人などの「個人」に対して、「個人」が有償で自宅を貸し出すという新しいビジネスモデルとしての、民泊は広がりを見せていたのだ。

 部屋を貸す側にとっては、余っている自宅の一部を貸し出すことや、旅行で家を空けている間に自宅を貸し出すことで、手軽な副収入が得られると人気があり、利用者にとっても、ホテルなどの宿泊施設よりも格安で宿泊が出来ることから、人気を博していた。仕組みだけを見れば、まさにWIN-WINの仕組みと言えるだろう。

 一方で、見ず知らずの人の家に泊まることから、様々なリスクがあったことも事実である。この民泊ブームに警鐘を鳴らすのは、この問題にも詳しいジャーナリスト・竹村明氏である。

「ホテルなどの宿泊施設は、衛生面や防災、防犯対策などが法律により定められていますが、そういった意味で民泊は、従来の旅館業法に照らし合わせると要件を満たさないような物件がほとんどです。民泊用の法律として『住宅宿泊事業法』があり、一定の条件付けはされていますが、見ず知らずの人の自宅に泊まる以上、リスクはあると考えた方がいいでしょう。仲介サイトはあくまで仲介するだけで、施設運営方法などは、個人に任されています。また、民泊ビジネス自体が始まって間もないことや、宿泊先が個人宅であることから、ホテルや旅館のような一定の信頼が出来るレビューサイトがないことも問題と言えるでしょう」

 以前より様々な問題点が指摘されている〝民泊〟。政府は法律を作るなど対策を講じてはいるものの、その勢いのある広がりに対して法規制が追い付いていない実態が浮き彫りとなったわけだ。

 今回の事件で使用された民泊も、自治体などによって認定されておらず、〝ヤミ民泊〟だったという指摘もある。問題だらけの民泊…、被害女性の死を無駄にしないためにも、適切な法規制や、安全な仕組み作りが求められている。

(文◎朝比奈ゆう)