【不法就労でベトナム人逮捕】問題だらけの「難民認定申請」とは?

 警視庁組織犯罪対策1課は、虚偽の難民認定申請をして不法就労していたとして、ともにベトナム国籍で福岡県北九州市八幡西区の無職、グエン・ヴァン・オワン容疑者(24)とその妻(20)を入管難民法違反(資格外活動)容疑で逮捕した。

 グエン・ヴァン・オワン容疑者夫妻は、2017年7月から11月の間、就労できない期間中であるにもかかわらず、北九州市内の食品製造販売会社などでアルバイトをした疑いが持たれている。

 同課によると、グエン・ヴァン・オワン容疑者夫妻は「留学」の資格で入国。昨年6月、同年夏に終える予定の在留期限を前に、「裏社会から借金し帰国したら命が狙われる」として、最も申請の受理が多いことで知られる東京入国管理局に難民認定を申請したという。

 グエン・ヴァン・オワン容疑者は調べに対して、「日本で働けると知人に聞き、虚偽申請した。働けないとは知らなかった」と供述しているという。

 法務省が今月27日に発表した情報によると、東京・名古屋両入国管理局は、平成29年11月6日から12月1日の間に不法残留など入管法違反の集中摘発を実施し、そのうち341人を摘発。このうち3割弱が難民認定申請中だったという。難民に該当する理由がないにもかかわらず、申請をする外国人が多数いることが指摘されていることから、集中摘発は実態を把握するために実施されたとのことだ。

 難民認定申請中だったのは、摘発された外国人の27.5%に当たる94人。最も多かったのはベトナムの44人で、次いでフィリピンの25人、インドネシアの11人だった。94人中85人が不法就労をしており、このうち75人は、今年1月末までに申請を取り下げていた。

 また、ベトナム人は技能実習生として来日した後に実習先から逃亡して難民認定申請をするケースが、フィリピン人は観光目的で入国してから申請をするケースが目立ったという。法務省は今年1月から、明らかに難民に該当しない事情を述べている申請者には就労を認めず、在留期限後に強制退去とするようにしている。

『難民認定制度』とは、難民である外国人が難民としての保護を受けられる制度だ。難民申請を行い認定を受けることで、在留許可をもらうことができる。また、保険にも加入することが出来るようになる。

 平成29年の難民認定申請数は1万9628人で、前年比より約80%ほど増加し、過去最多を記録していた。そのうち難民認定者が20人、難民と認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた者が45人だった。申請者の国籍を多い順に見てみると、フィリピン、ベトナム、スリランカ、インドネシア、となっていた。一方で、難民認定者の主な国籍は、シリア、ミャンマー、イラク、コンゴ共和国だった。

 今回逮捕されたグエン・ヴァン・オワン容疑者らは、虚偽の難民認定申請をしたとされているが、その背景には「難民申請制度が濫用されている実態」があると、難民問題に詳しいジャーナリスト・竹村明氏は語る。

「難民認定申請をめぐっては、制度改正により、平成22年3月から『審査期間中の生活に配慮するため』として、認定審査中であっても、申請から6カ月が経過すれば一律で就労が認められるようになりました。不認定になった場合は不服申し立てができるほか、再申請が何度も出来るようになったのです」

しかし、改正した結果、今度は難民認定申請者数が増え過ぎてしまい、処理が追いつかない状況となってしまったという。

「本来〝難民〟とは、『人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者』と定義されています。しかし、法改正によって半年後には就労が認められるようになったため、母国での近所トラブルや親族間での借金トラブルなど、明らかに難民には当てはまらないような人であっても、難民であるとの虚偽申請をする人が増えたのです。現状、難民認定申請から結果通知までの期間は、平均して8カ月ほど。その後、不認定の場合、それを不服として異議申し立てを行うと、再審査でさらに平均2年以上はかかります。審査中はビザが延長され、申請から半年が経てば就労ができるという制度を悪用し、ビザ延長目的、就労目的の人が多くいるのです。また、行政書士が手数料欲しさにこれらの手続きを代行して行い、この制度を悪用しているという実態もあります」(前出・竹村氏)

 それらの問題が指摘されるようになったことを受けて、法務省は今年1月15日より、これまで申請から6カ月経過すれば一律に認めてきた就労資格について、大幅な制限をするなど、新たな運用を始めたばかりだった。

 難民認定者数が、他国と比べて著しく少ないことから、難民認定に対して非常に慎重な国と指摘されている日本。本当に保護すべき人が迅速に保護される制度が、一刻も早く運用されることを期待する。

(文◎朝比奈ゆう)