【覚せい剤取締法違反容疑】知られざる注射器の値段と流通の裏事情

大阪府警薬物対策課と近畿厚生局麻薬取締部(通称キンマ)は2月27日、医薬品医療機器違反及び覚せい剤取締法違反(ほう助)の疑いで、東京都文京区の会社員、浅田和弘容疑者(71)ら3人を逮捕したと発表した。捜査当局によると、浅田和弘容疑者らは、2017年9月から10月の間に東京と福岡の覚醒剤の密売人に無許可で注射器8400本を譲り渡した疑いが持たれている。

事件が明らかになったのは、昨年7月に大阪で覚せい剤の密売人が逮捕された際、大量の注射器の箱が押収され、その製造番号から都道府県知事からの許可が失効している医療機器販売会社が浮上。この医療機器販売会社の元経営者を通じて、浅田容疑者ら3名が共謀し、不正に仕入れた疑いがあることが判明した。

浅田和弘容疑者は調べに対し、「注射器を送ったことは認めるが、それが覚醒剤と一緒に売られることは知らなかった」と容疑を一部否認している。

覚醒剤の乱用と密接な関係がある注射器だが、密売事件の摘発では、覚醒剤そのものに対しての取り締まりだけにとどまるケースが多い。今回、注射器の密売者が逮捕された事情について、本誌解説員でジャーナリストの竹村明氏は次のように説明する。

「現在流通する覚醒剤のすべてが、海外で密造されたものと言われています。それが国内に密輸される段階では、最低でもキロ単位の量です。そこから、仲卸人と呼ばれる人間を介して、末端の密売人へと流れていきます。一般的に、この仲卸人の段階で、覚醒剤の使用に用いる注射器(通称:ポンプ)やガラス製パイプ(通称:ガラパイ)なども調達しているケースが多いようです。ただし、製造番号や配送先などが記載されている箱や伝票類は処分されていることが多く、なかなかその実態をこれまでは掴むことができませんでした。今回は2つの覚醒剤密売事件の捜査で段ボールに入った大量の注射器が見つかり、流通ルートが特定でき、逮捕に至ったのです」

一般人では入手することが難しいことから、覚醒剤の末端の密売人が覚醒剤とセットで販売することが多い注射器。しかし、セットで販売される理由はそれだけではないという。

「注射器の針の先端部は使用すること変形してしまうことから、覚醒剤常習者は覚醒剤を購入するたびにセットで購入することが多いのです。また、注射器の元々の値段は1本数十円程度です。それを密売人は500円や1000円という値段で客へ販売するので、それ自体が商売になっているのです」(前出・竹村氏)

今回逮捕された浅田和弘容疑者ら3名は、全国に数万本もの注射器を密売していたとみられている。彼らが利益を得た陰で、いったいどれだけの人間が覚醒剤によって乱用者を生み出したのだろうか。それを思うと、厳罰をもって臨んでほしいものである。

(文◎RNO編集部)