【エジプト発】「フェイクニュース拡散事件」は国家による人権蹂躙?

「フェイクニュース」と言う単語が認知されつつある。これは、「何かしらの思惑の下に流された虚偽のニュース」のことで、アメリカ・トランプ大統領が何度も口にしてご記憶の方も多いであろう。それによって世論などを操作し、利益を得る人間がいると言われているわけだが、現在エジプトではこのフェイクニュースをめぐって〝とある騒動〟が起こっており、話題になっているという。

 BBCが今月2日に伝えたところによると、娘が拷問され、姿をくらますことを強いられていると以前同局に話した女性が、「偽りのニュースを広めた疑い」で28日にエジプト当局に逮捕されたという。現在、彼女は取り調べのために15日間にわたって拘留されていると伝えられている。

 2017年4月より、BBCはこの女性からの聞き取りをもとに、彼女の娘であるズベイダの行方が分からなくなっているということを記事にしたという。しかし、先月の26日にそのズベイダがエジプトのトークショーに出演。その場で、「自分はいかなる形でも拘留されてはいなかった」と発言。このズベイダのトークショー出演以後、この件に関する国家側、BBCと母親側で、見解が衝突しているのだ。

 エジプトの国家情報サービス局は、BBCの記事に対して「絶対的な改竄と脚色が行われている」と謝罪を要求。さらにエジプトの国営新聞であるアル・アーラムは、その組織の名前こそ言及していないものの、ズベイダの母親がエジプトの国益に反するようなフェイクニュースを出版、放送する非合法な組織に所属していると非難している。

 しかし、娘がトークショーに出演した翌日である先月27日に、女性はトルコに拠点を置くムスリム同胞団のテレビチャンネルに出演し、「誰が何と言おうと、私がBBCに語ったことは真実です」と発言し、「娘は拷問されて無理やりテレビに出演させられている」と語っている。BBCは国家情報サービス局の謝罪要求に対し、「取材班の整合性を信じており、今後エジプト当局のクレームに対する対応を議論する」と述べている。

 現地の人権活動家によれば、ズベイダの事件について熟知していたとされるエザット・ゴニムという弁護士が、1日の夜に職場から帰る際に姿を消したとされており、当局による交流の発表はなかったものの、国家権力による拘留が疑われているという。国際的な人道的NGOであるアムネスティ・インターナショナルは、「ゴニム弁護士が強制的に失踪させられている可能性があることを深く懸念している」と声明を発表している。

 今回の女性が逮捕される前日である27日、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領は、「誰かが軍隊や警察を侮辱した場合、それは意見の自由ではなくエジプト人全員への侮辱である」と声明を発表。軍や警察などへの侮辱は反逆罪であるという見解を示すなど、強権を発動している。さらに人権団体は今月末に行われる大統領選に先駆けて、野党に対する弾圧が行われ、大統領を支持しない層への逮捕、攻撃などが行われていると主張している。

 果たして、この事件はズベイダの母親によるフェイクニュースの拡散なのか、それとも国家による個人攻撃が行われたケースなのか。今後に注目したい。

(文◎コリス東条)