【万引き再犯】女子マラソン元日本代表選手が抱える闇を専門家が指摘

 前橋地検太田支部は、群馬県太田市内のスーパーで菓子などを万引きしたとして、女子マラソンの元日本代表選手で飲食店従業員の原裕美子容疑者(36)=栃木県足利市=を今月2日、窃盗罪で起訴した。

 原裕美子容疑者は、2月9日午後8時45分ごろ、太田市のスーパーでキャンディー1袋など3点(販売価格計382円)を盗んだとされる。捜査関係者によると、原裕美子容疑者が服の中に商品を入れたまま店外に出ようとしたところを、スーパーの関係者が取り押さえ、警察に引き渡したという。原裕美子被告は「店を出る前に商品を戻そうと思っていた」などと話していたという。

 原裕美子と言えば、2005年の名古屋国際女子マラソンで初優勝し、同年にフィンランドのヘルシンキで行われた世界選手権では日本人選手最高の6位に入賞するなど、世界陸上に2度出場した、国内有数のマラソンランナーであった。しかし、その後は体調不良や怪我に苦しみ、第一線から退いた後はこれまで何度も窃盗罪で逮捕・起訴されている〝万引き〟の常習犯となっていた。2014年と15年には万引きで2度の罰金刑を受けており、2017年11月時点で、計5回の前科・前歴があったようだ。

 原裕美子容疑者は昨年7月、足利市のコンビニで清涼飲料水や化粧品など8点(販売価格計2673円)を盗んだ疑いで栃木県警が逮捕され、同年11月に宇都宮地裁足利支部で懲役1年・執行猶予3年の有罪判決を受けていた。つまり、今回の万引きは、執行猶予中の犯行だった。

 足利市における窃盗事件の初公判(昨年11月8日)では、「厳しい体重制限から過食や嘔吐を繰り返す摂食障害となり、万引きを繰り返していた」ことが明らかになっており、原裕美子容疑者自身、「しっかりと治療を続け、今後このようなことがないよう、事件のことを忘れることなく日々を過ごしていきたい」と述べていた。しかし、それからわずか3カ月足らずでの再犯であった。

 依存症の専門医A氏は、〝適切な治療こそが再犯に歯止めをかける〟と警鐘を鳴らす。

「何度も逮捕されていて、万引きが犯罪であるとの認識があるにもかかわらず再犯してしまう人や、買えるだけのお金を持っているのに万引きしてしまう人の中には、〝クレプトマニア(窃盗症)〟という病気である人が多くいます。こういう人たちに対しては、いくら刑罰を与えても再犯は止まりません。適切な治療を行うことこそが、再犯に歯止めをかけることに繋がるのです」

 一方で、こうした問題に対応できる医療機関はまだ少ないともA氏は指摘する。

「依存症である場合、これは脳の問題なのです。つまり、『やるな』といった精神論では解決できない問題です。『止めたいのに止められない』と本人も苦しんでいるケースも多いです。近年では、依存症治療の発達により、再犯を防ぐには刑罰よりも治療が有効であるとの認識が、医療業界の中でも広まってきてはいます。しかし、日本にはまだこの問題に対応できる専門的な医療機関は多くありません。また、被告人に対してどのように治療を行っていくのか、裁判所・医療業界・弁護士など各方面の連携が必要となってきます。適切な治療体制を一刻も早く確立する必要があります」

 万引きを繰り返すことは、犯人を含め、万引きされる側にとっても良いことは何もない。今後、〝クレプトマニア(窃盗症)〟を含めた依存症に対する適切な治療体制が、一刻も早く確立されることを願う。

(文◎朝比奈ゆう)