依存症患者の競馬場入場規制は政府の〝アリバイ対策〟だった?

アルコール、薬物、果てはセックスなど、日本においても「依存症」に悩まされる人は尽きないが、ほかに誰もが陥りかねない症例として有名なのが、「ギャンブル依存症」である。
公営ギャンブルの中でもっとも知名度が高いと言える日本中央競馬会(JRA)は、そのギャンブル依存症対策として、家族がJRAに申請をすれば、患者本人の意思に関係なく、競馬場や場外馬券場への入場を禁止できる措置を取ることを決めたと、読売新聞が報じている。これは今秋からの実施を目指しているという。

この対策は、政府のギャンブル依存症対策関係閣僚会議が昨年8月にまとめた提言を受けたもので、JRAは家族から提供された患者の顔写真情報を競馬場や場外馬券場に配り、職員が見つけた場合は声をかけて入場させない方針だ。また、入場門が複数ある競馬場もあり、どこまで徹底できるかは不透明ではあるものの、JRA幹部は「対策をアピールすることで、ギャンブル依存を抑制する効果にも期待したい」と話しているという。

昨今、パチンコ・スロット・競馬・競艇などのギャンブル依存症患者の増加は見過ごせない問題である。そこで、カジノ解禁に向けた法案を成立させた政府は、2020年東京五輪を目前に控え、ギャンブル依存症対策に力を入れている。

政府により2017年8月に発表された「ギャンブル等依存症対策の強化について」では、幅広くギャンブル等依存症に専門的に対応できる「一般財団法人ギャンブル依存症予防回復支援センター」を、モーターボート競走関係団体において設立(6月)することや、公営競技におけるインターネット投票サイトのログイン画面等において、ギャンブル等依存症の注意喚起表示し、相談窓口の案内等を実施(4月から)。限度額を設定できるシステムを、次期システム改修に併せて構築することなど、様々な対策を検討している。他にも、「家族申告によるアクセス制限の仕組みの構築」が検討されており、今回の入場規制措置は、これに基づいた具体的な対策と考えられる。

こうした政府の動きを受けて、JRAもギャンブル依存症対策に力を入れざるを得なくなったようである。JRAの公式HPには、「勝馬投票券の購入にのめり込んでしまう等の不安のある方へ」というタイトルで、相談先の電話番号を掲載したり、ギャンブル障害に詳しい専門医が「ギャンブル障害とは」を語る記事を掲載したり、ギャンブル障害についてのリーフレットを作成するなどしている。果たして、患者自身がギャンブル依存症であるとの自覚を持っているのか疑問であるが、ギャンブルを提供している団体とは思えないほどに、ギャンブル依存症対策を意識していることが窺える。

JRAのHPより

また、パチンコ・スロット業界では、今年2月から新たな新規制が導入されている。1回の大当たりの出玉制限が2400発から1500発へ引き下げになるほか、4時間パチンコ台を遊戯した場合の出玉が3分の2に下げられ、金額にすると4時間で5万円以内の出玉となるようにするなど、政府は、特にパチンコ・スロット業界に対しての規制を強化させているのだ。

これら、政府主導による〝ギャンブル依存症対策〟について、本誌解説員でジャーナリストの竹村明氏は「〝アリバイ対策〟にならないようにする必要がある」と解説する。

「日本のギャンブル人口の8割以上は、パチンコ・スロットを行う人だと言われています。そのため政府は、特にパチンコ・スロット業界に対して今まで以上に強く規制を始めています。他業界への規制も含め、対策をしていることはいいことですが、本当に依存症患者への適切な対策となっているのか、各ギャンブル業界や医師、国、自治体がきちんと連携して十分な話し合いを行った上で対策案を進めているのか、少し疑問です。現在の対策が依存症患者の減少へ繋がれば良いのですが、カジノを日本に導入させようとしている政府の 〝アリバイ対策〟にならないかが注目ポイントです」

昨年9月に厚労省が発表した統計によると、日本のギャンブル依存症患者の人口は320万人にも上り、諸外国と比べて多いとされている。外国に恥じないよう、対策の結果が表れることを期待したい。

(文◎朝比奈ゆう)