【ケニア発】500人の医師がボイコットした問題だらけの〝黒い巨塔〟

 日本においても深刻であると言われ続けている「医師不足」の問題。OECD(経済協力開発機構)に加盟する先進国の中でも、日本は人口当たりの医師数が世界の平均値を下回っており、対策が求められているのが現状だ。

 だが、そんな医師不足の問題において、より重大な難題を抱えているのが発展途上国である。特にアフリカ諸国では、急激な人口増加による医師不足が顕著となっている国が非常に多い。そんな中、東アフリカにあるケニアにおいて、この医師不足にまつわる騒動が起き、注目を集めている。

 BBCが今月5日に伝えたところによると、ケニアにおける最大の国立病院である国立ケニヤッタ病院において、500人の医師がストライキのために仕事をボイコットしたという。彼らはその先週、間違えた患者に脳外科手術を行って停職に追い込まれている同僚医師の復職、及び病院の予約システムのデジタル化や手術室の増設など、病院の運営の改善、さらには昨年ナイロビ州が同意したという未払いの手当ての支払いを要求しているという。

 この事件は、先月25日に男性2人がケニヤッタ病院に搬送された際、脳内の血栓を除去する必要があった患者と、頭部の腫れの治療だけで良かった患者を取り違え、必要のない手術を行ったというものだ。病院はその後、患者が死亡したという報告を否定している。医師以外に、この手術に関わったとされる看護師2人と麻酔科医も停職処分中であるという。

 こうしたストライキは、近年のケニアでは多発しており、昨年においても労働条件や賃金の見直しを訴えるストライキが3カ月以上行われたという経緯がある。こうしたストライキは、ケニア国内の他の病院へ波及する恐れがあり、「そうなった場合は医療を必要とする人々の命を危険に晒す可能性がある」とBBCは結論付けている。

 この件に関して、同国医師会の会長であるサミー・オロコは、「事故に関わった医師を停職にするのはいつもの思考停止的なお決まりのパターンであり、根本的に問題を解決できない」と語り、ストライキについても国立ケニヤッタ病院のシステムを見直すいい機会であると擁護している。

 このケニヤッタ病院は、日に3000人以上の患者を受け入れている巨大病院であるという。日本の東大病院が発表している平成28年度の外来患者数の一日平均が2926人であることから、ほぼ同数だ。このことから推測するに、その労働環境は苛烈極まるものなのだろう。

 もちろん、それによって患者の命を危険に晒す可能性のあるストライキや、医療事故が正当化されるわけではない。しかし、上記の医師会の会長が言及したような、根本的な医療制度の解決がケニアに求められているということは確かなようだ。

(文◎コリス東条)