【ギリシャ・スーパーリーグ】名門チームの試合が没収、その理由は?

 スポーツの観戦は多くの人が楽しめる娯楽の一つに数えられるが、以前から指摘されている問題として、試合の結果に熱中するあまり、あるいは落胆した観客が暴徒化するというものがある。特に世界中で愛されるサッカーの場合、イギリスで「フーリガン」、イタリアで「ウルトラス」と呼ばれる暴力的なファンが、これまで多くの問題を起こしてきた。中でも特筆すべきが、1985年にベルギー・ブリュッセルのヘイゼル・スタジアムで行われたチャンピオンズ・リーグ決勝で、試合を行っていたリバプール(イギリス)とユベントス(イタリア)のファンが暴徒化した事件である。これにより39人が死亡、この事件は『ヘイゼルの悲劇』として現在もファンの記憶に新しいところだが、今回はファンではなく、クラブのトップが暴徒化するという前代未聞の事件がギリシャで起こり、注目を集めている。

 BBCが12日に報じたところによると、11日にギリシャのスーパーリーグ(1部)の上位チーム同士の試合で、クラブの会長が銃を持って乱入したことで没収試合となる事案が発生したという。この騒動が起こったのはAEKアテネとPAOKサロニカの試合。PAOKサロニカのフェルナンド・ヴァレラによるゴールがオフサイドで無効となった際、クラブの会長であるイワン・サヴィディスが腰に銃の入ったホルスターを持ったままピッチに乱入したのだ。そのため、AEKアテネの選手たちは安全のためにピッチから退避し、そのまま撤退。2時間後には試合中止が正式にアナウンスされ、サヴィディスは現地の警察が逮捕するために行方を追っているという。

 この問題はギリシャ国内でも重く受け止められ、スポーツ相の副大臣であるイヨルゴス・ヴァスリアディスは、首相であるアレクシス・チプラスとの会談の後、12日に行われる予定だった1部リーグの試合をすべて中止すると発表。スポーツが過去のように問題のある状態に戻っていると述べ、「条件やルールに則り、全員が賛同する明確な枠組みが作られることがなければ、(リーグ戦を)再開することはない」「こうした極端すぎる現象は、勇気を持った決断を要求する」と声明を出した。この件について、国際サッカー連盟(FIFA)は国際マッチからギリシャを一時的に排除する恐れがあると通告を出し、しかるべき措置を迅速にとるようにギリシャに促し、欧州サッカー連盟(UEFA)も非難の声明を出しているという。

 この件について、ネット上の外国人たちは「断固たる行動が必要で、サヴィヴィディスをフットボールシーンから締め出すべきだ」「これは単なるゲームで、現実から逃避するためのほんの数時間だ。狂気に駆られるんじゃない」とサヴィディスを批判する声が多い。一方で、「そもそも銃規制をしろ」「サッカーの審判には絶対になりたくない」というような声も見られる。イタリアのセリエAなど世界トップリーグを抱える国が、暴力的なファンの締め出すことにより安全な観戦ができるようになりつつある現状で、こうした事件が同じヨーロッパで行ったことに対して衝撃を受けている人が多いようだ(とはいえ、クラブのオーナーが銃を持って乱入するという今回の例は他の国で例を見ないものだと言える)。

 スポーツの観戦自体は、非日常を感じられる素晴らしい娯楽であることは間違いない。しかし、こうした危険な事態が起こってしまうような場所であり続ければ、ファンが離れて行ってしまうことは自明だ。果たして、この機会にギリシャのサッカー協会は生まれ変われるのか。今後に注目したい。

(文◎コリス東条)