〝ハートショット〟の開発者!? 危険ドラッグ製造業者の主犯を逮捕

 今年1月下旬、東京都練馬区のアパートの一室から185キロ、末端価格にして約36億円相当もの危険ドラッグが見つかり、医薬品医療機器法違反(販売目的貯蔵)容疑で米谷勝己被告(35)ら7人が警視庁組織犯罪対策5課に逮捕されていた事件で、警視庁は新たにこのグループの主犯格と見られる男を逮捕した。

 今月10日、医薬品医療機器法違反(販売目的貯蔵)容疑で新たに逮捕されたのは、職業不詳の沖山潮容疑者(45)。警察の調べに対して沖山潮容疑者は、「廃棄するために所持していただけだ」と容疑を否認しているという。

 沖山潮容疑者は2013年、麻薬指定された「α-PVP」などの危険ドラッグを営利目的で販売していたとして逮捕・起訴され、現在、執行猶予中だった。

 当編集部では、沖山潮容疑者の素性をよく知る、危険ドラッグ業界の関係者Y氏(53歳)とコンタクトを取ることに成功。沖山潮容疑者とは、いったい何者なのか…?

「彼(沖山潮容疑者)は2013年の逮捕当時、『SSC』という屋号を使って、危険ドラッグの製造や販売、卸を取り仕切っていました。中国の化合物販売会社と信頼関係を構築し、規制されていない危険ドラッグの原料次々に輸入。日本国内の規制をかいくぐりながら売り上げを伸ばし、一時は業界のトップ3に入る規模にまで成長させたのです。最盛期は、毎月1億円以上の売り上げがあったと聞いています」

 2013年に逮捕・起訴され、執行猶予付きに判決を受けた沖山潮容疑者。それでも懲りずに危険ドラッグを扱い続けた理由について、Y氏は以下のように続ける。

「彼(沖山潮容疑者)は携帯電話のレンタル事業も手がけていたのですが、次第に業績が悪化していったと聞いています。一方で、複数の社員を抱えていたことから、彼らへ支払う人件費を確保するためにも、簡単に利益が上がる危険ドラッグは魅力だったのでしょう。それで、彼は再び危険ドラッグの販売を始めたようです。その際に、SSCの名前を伏せて、新たなブランドとして販売を開始したのが〝ハートショット〟です。」

〝ハートショット〟といえば、2014年9月中旬からの1カ月の間に15人が死亡。使用による交通事故も40件ほど確認されている、国内に出回った危険ドラッグの中で最も健康被害が多かったとされる史上最悪の危険ドラッグだ。沖山潮容疑者らは、その〝ハートショット〟の流通に関与していたとみられるのだ。

〝ハートショット〟

「彼(沖山潮容疑者)は、2014年6月に起きた『池袋危険ドラッグ吸引RV車暴走死亡事故』に使用された危険ドラッグの成分に似た、成分を使って(当時、未規制)〝ハートショット〟を製造したと聞いています。このトラブルには、本人もだいぶ懲りていたようで、いったんは危険ドラッグから離れたようです。しかし、その後に手を出した健康食品関連の事業うまくいかず、再び危険ドラッグに手を出してしまったようなのです」(Y氏)

 本誌解説員でジャーナリストの竹村明氏は、次のように警鐘を鳴らす。

「『池袋危険ドラッグ吸引RV車暴走死亡事故』で使用された危険ドラッグは『総統』という製品で、5F-AMBとAB-CHMINACAの2つの成分が検出されています。死亡事故が多発した〝ハートショット〟からは5F-ADBが検出されています。これらは、合成カンナビノイドの一種なのですが、科学構造的にも酷似していて、いずれも毒性が大麻よりも強く、人体に摂取すると一気に意識障害などを引き起こす危険な成分です。当時、日本では一旦市場に流通した成分を、指定薬物として規制していくという対策がとられていました。ですが、これはまさに販売業者と規制当局とのいたちごっこの状態。この状態が繰り返されていった結果、世界的に全く流通していない、誰も摂取したことのない化学物質が次々に輸入されて、危険ドラッグとして販売される状況になっていったのです。つまり、摂取量や副作用なども全く研究されておらず、すべて未知なる危険なシロモノものなのです」

 得体の知れない中国の企業が製造した成分を、衛生管理など全くされていない環境の中で、国内の業者が商品化していく……それが危険ドラッグの実態だ。この状況を多くの人が知り、危険ドラッグに手を出す者がいなくなる社会になることを、願わずにはいられない。

(文◎四菱 紘淳)