【危険ドラッグ・集中連載①】国内に初めて持ち込んだ男の末路(前編)

相次ぐ摘発により一時的には下火になったものの、次々に新たな薬物が登場しては「事件」が起こり、また摘発が行われるというイタチごっこが昨今繰り返されている〝危険ドラッグ〟。当サイトでは、国内で長らく危険ドラッグの製造や販売に関わってきた複数の人物に取材をし、その実態を明らかにしていく。

第1回目は、危険ドラッグの製造方法や流通について、最新事情を取材した。

今回話を聞いたのは、2014年まで関西地区を拠点に危険ドラッグの製造や販売、卸を手がけていたA氏(48)。一見すると、気の良い中年男性といった雰囲気を醸し出すA氏は、危険ドラッグが合法ハーブとして国内に広まり始めた09年頃に開業。14年6月に東京都豊島区で発生した「池袋危険ドラッグ吸引RV車暴走死亡事故」が起きたことを契機に、警察などの取り締まりが強化されることを危惧し自主廃業。その間に5億円以上もの利益を荒稼ぎしていたという人物だ。

「07年の年末にイギリスへ遊びに行った際に、現地に住む友達が『スパイス』という名のいわゆる〝合法ハーブ〟を勧めてきたんです。見た目は大麻に似ているけれど、明らかに匂いはそれと異なるし、所詮ハーブだから、大麻のような効果なんてないだろうと思いながら吸っているうちに、突然ドーンという感じで強烈な衝撃が来たんです。こんなに効果があるのに合法っていうんだから、これを日本で売ったら儲かるんじゃないかと考えたのがきっかけです」

そして、最初は商品を日本に持ち帰って売ろうと思ったA氏だったが、あることに気付いたという。

「ネットなどで製造者や卸元などを探したんですが、そのうちにハーブ自体に効果があるのではなく、そのハーブ(植物片)に付着している〝合成カンナビノイド〟という科学物質に大麻と似た効果があるということが分かったんです。じゃあ、『合成カンナビノイドが手に入れば自分で作れちゃうんじゃないかと』って考えになり、ネットで調べていたところ、中国のBtoBサイトで、多くの業者が様々な合成カンナビノイドを出品していることが分かったんです」(A氏)

〝合成カンナビノイド〟とは、大麻の陶酔作用とされるTHCと似た作用をする物質を化学的に合成したものであり、科学・医薬品研究の過程で様々な物質が発見されてきたものだ。これら合成カンナビノイドの中には、大麻の数十倍から数百倍という強力な作用を持つものも存在する。後に、そうした物質が市場に出回ることで、死亡事故などの重大な健康被害を引き起こしたとされている危険な物質だ。

A氏が話す通り、中国のBtoBサイトを見てみると、現在も危険ドラッグの成分とのなる合成カンナビノイドをはじめとした、様々な化学物質が販売されている。だが、科学的知識もないA氏が、見ず知らずの外国の企業とどうやって取引することが出来たのだろうか?

「中国の企業といっても、その大半は、二十代、三十代の若者が個人レベルでやっている商社なんです。彼らにしたら、ITビジネスという感覚なんです。実際のやりとりはスカイプのチャットや通話機能を使って、片言の英語でもなんとかできちゃうんです。私は英語が得意じゃないので、ネットの翻訳サービスを使っていましたけれど、それで十分なんです。中国の企業も、我々に買って欲しいから、こっちの質問にも積極的に回答をしてくれました。それで、ヨーロッパで流行っている合成カンナビノイドを教えてもらい、それらを数種類、1㌔ずつ注文したんです。当時は税関も緩かったので、普通に〝農薬〝として注文すると10日ほどで届きました」(A氏)

こうして、危険ドラッグの原料となる合成カンナビノイドを入手したA氏は、早速試作に取りかかったという。A氏が説明するように、ハーブ(植物片)を燃焼させて吸引するタイプの危険ドラッグは、ハーブに合成カンナビノイドを付着させることで、危険ドラッグとしての効果を生み出している。しかし、どのぐらいの量を、どうやって付着させるのかは「企業秘密」となる。では、A氏はその配分や製造工程を、どのようにして知ることができたのだろうか?

(文◎四菱 紘淳)