【危険ドラッグ・集中連載①】5年で5億円以上儲かる仕組み(中編)

中国の個人商社から合成カンナビノイドをはじめとした、様々な化学物質を取り寄せることに成功したA氏(48)。そこからどのようにして〝危険ドラッグ〟は出来上がったのか?

「最初は、ハーブ(植物片)と合成カンナビノイドの混ぜ方も分からず、苦労しましたね。使うハーブ自体には全く効果がないので、紅茶やミント、セージ、ラズベリーリーフなど、手当たり次第に手に入るモノを使って試しました。合成カンナビノイドをハーブに、振りかけて塩もみするようにやってみたんですが、全く均等に混ざらない。だったら、水に溶かしてドレッシングみたいにかけてみようとしてみたり…。しかし、合成カンナビノイドは水に溶けないのですが、〝有機溶剤〟で溶けることが最終的に分かり、この方法で製造することにしたんです。配分は、大麻好きの友人などと試しながら探っていきました」(A氏)

科学知識を全くと言っていいほど持ち合わせていなかったA氏だが、試行錯誤の末、わずか1カ月で商品化にこぎ着けたという。こうして、商品の販売を開始したのだが…。

「最初はサイトを立ち上げてネット販売をやってみたのですが、当時は合法ハーブ(危険ドラッグ)の認知度がなさ過ぎて全然売れなかったんです。諦めかけていたんですが、09年頃からぼちぼち注文が入るようになって、ちょうど同じ時期、繁華街に合法ハーブ店の出店が始まったんです。それで、合法ハーブ店に営業をかけたところ、あっという間に売り上げが倍増。それどころか、あまりにも増えちゃって、笑いが止まらない状況になりました(笑)」(A氏)

09年頃から国内市場にも出回り始めた危険ドラッグだったが、当時は規制も緩かった。そんな中、「自然由来の安全で合法でありながら効果のある物質」という誤った情報が、口コミやネットを中心に広まり、その後は一気に使用者が増えていく。実際には、決して合法ではなく、決して自然由来というわけでも安全でない、中国人が作った化学物質がその効果を支えていたのだ。

ところで、気になるのは、危険ドラッグの儲けの仕組みである。この点について、さらにA氏に話を聞いた。

「合成カンナビノイドの価格は、1㌔あたり30万~45万円。それを、1パッケージあたり0.1~0.5㌘ほど入れて販売していました。ハーブは1㌔数千円。1パッケージに使う量は3㌘。このほかに、商品ケースやパッケージの印刷代、従業員の人件費、事務所の家賃などもかかります。それを含めても1パッケージあたりの原価は500円ぐらいだったと思います。それを、ネットの直販サイトで5000~7000円で売り、店舗に卸す場合で2000円前後の値を付ける。それと同業他者向けのOEM(他社の製品を作ること)もやっていて、ブランクパッケージの状態で1600~2500円程度で卸していました」

合成カンナビノイドの原価は、0.1㌘あたり30円から45円。仮に1商品当たり0.5㌘を使用していたとして計算すると、150円~225円。それを、原価数円から数十円ほどのハーブと混ぜるだけ。つまり、ハーブを燃焼させ吸引するタイプの危険ドラッグの1商品当たりの原材料費はたった数百円だったのだ。実際には、商品として販売するため、包装などの経費がかかってはいるが、それを最大十倍以上の価格で販売するのだから、儲からないわけがない。A氏は10年に5000万円の利益を出して以降、14年に廃業するまで、毎年1億円以上の利益を得続けたのだから、少なく見積もっても合計5億円以上を稼いでいたことになる。

それだけ稼いだのだから、だいぶ資産を残していたはずだが…。

「毎日何十万円、何百万円というお金が入ってくるから、麻痺しちゃうんですよね。こんな商売がいつまでも続くわけがないのに、いつまでも売り上げが続くと思ってしまう。だから、レクサスやBMWを買ったり、高級時計を何本も買ったりして、廃業時に残っていたのは3000〜4000万円程度だったと思います。下手に預金とかすると、税務署に目を付けられる可能性もあると考えて、常に現金で自宅に保管していたのも、資産を残せなかった理由かもしれませんね」(A氏)

だが、その後になって起きた事態により、かろうじて残すことができた3000〜4000万円も、すっかり使い果たすことになったという。次回・後編では、その理由を追及する。

(文◎四菱 紘淳)