番組収録中に在来生物が大量死…人気番組は〝打ち切り〟に!?

今、最も勢いのあるテレビ・バラエティーと言われる人気番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』を巡り、大きな問題が持ち上がっている。この番組に登場した池が、同番組の収録が行われたことによって「在来種が大量死した」と指摘する声が多数上がり、テレビ東京の社長が謝罪するまでの事態に発展しているのである。

「危険生物に悩まされる近隣住民のSOSに出動! 外来種が大量発生し困っている池の水を全部抜き、そこには何が潜んでいるのかを大調査! そこには予想だにしない生物の姿が!?」と、番組HPに説明があるように、番組の主役・舞台は〝池〟である。近隣住民の依頼をもとに、普段は身近でありながらも意識することのない「池の水を全部抜く」という斬新な発想のもと、外来種を駆除して在来種の生態系を守るとともに、水質改善を図ってキレイにすることをテーマとしている。水を抜くことで姿を現す多種多様な生き物たちに視聴者はワクワク・ドキドキと心躍らされ、同時に生き物の生態系や環境問題についても学んでいくというスタイルだ。

番組MCは、ロンドンブーツ1号2号の田村淳と、ココリコの田中直樹が担当。ここに専門家のほか、人気タレントやお笑い芸人などが助っ人として水抜きに参加し、さらにはお手伝いとして地元住民も大勢参加する〝大イベント〟としてVTRは展開していくという流れである。2017年1月15日の放送開始以来、2~3カ月に1回のペースで放送される不定期放送の特番で、今月11日の放送で7回目を迎えていた。

第1回目の放送は、『日曜ビッグバラエティ』枠(毎週日曜・夜7時54分~9時54分放送)の視聴率が通常は平均5~6%である中、8.3%を記録。さらに今年の正月特番では、『しゃべくり007 新春4時間半SP・第2部』(日本テレビ系)、『めちゃ2イケてるッ! 新春3時間半SP・第2部』(フジテレビ系)など、各局のイチ推し番組が並ぶ激戦の時間帯であったにもかかわらず、平均13.5%の高視聴率をマーク。まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いを見せている番組で、この人気を受けて、今年4月からは月1回ペースで放送されるという。

そんな人気番組で起こった問題とは、今月11日に放送された『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦7」中の、岐阜県羽島郡笠松町『笠松トンボ天国』の収録で起こった。番組HPによると、「岐阜県にある日本で有数の規模の広さを誇るビオトープ『笠松トンボ天国』。38種類を超えるトンボがいたが、現在23種類くらいまで減っている。地域住民や小学生と一緒に守っているトンボのヤゴが、外来種の魚に食べられているらしい。ここには6箇所の大小の池があるが、その中で一番大きい『トンボ池』に近年、ライギョやアカミミガメが繁殖しているので、何とか手を打ちたい」とのことで、ココリコの田中直樹と共に、1000人を超える一般参加者が池の水を抜く様子が取り上げられた。そして作業を終え、環境保全団体の担当者は「これから環境が上向きになって来るんじゃないか」とコメントし、番組は無事に終了したかに見えた。

しかし、OA後、企画内容を疑問視する声や現場で大きな混乱が生じていたことが複数のイベント参加者から発信されたのだ。一般参加として企画に参加した、岐阜大学の「生物科学研究会」というサークルに所属する『ぎどら(@gibelio1)』氏が、番組放送前の2月21日のブログで、現場の混乱について詳細に記している。

その記述をまとめると、イベント前のみならず、撮影が進み池の水を抜き終わった時点においても、番組や主催者側から一般参加者に対して、企画の趣旨や意図の説明がなかったという。そのため、「水を抜いた後の池で、保護するためにヤゴを探す」ということを理解していない参加者が、各々やりたい放題し始める。そうした参加者が池の中を踏み荒らした結果、在来種を含む多くの小魚が致死、もしくは瀕死状態に。さらには、保護した生物を一時的に入れておくバットやバケツが圧倒的に不足しており、作業が効率的でなかったため、保護された生物は過酷な環境にさらされた。また、池に戻す生き物の選別を行うための(知識を有する)人材も圧倒的に不足していたようだ。

『ぎどら』氏は後日、主催関係者から情報収集をした結果として、以下を追記している。(以下、ブログより抜粋)

<当日>
・事前に守る会が交渉していた現地の専門家は当日来られなかった

・現地に集まったのは想定を超える数、不特定多数の参加者であった

・事前説明がないまま不特定多数の参加者が一気に池へ入ったため,トンボ池におけるヤゴの保護事情などを知らない人も多く、「まずヤゴを捕ってくれ」という進行指示への理解は薄かった

・現場では守る会会長や番組スタッフが拡声器によって適宜注意喚起や進行指示を出していたが、人が多すぎて十分に伝わりきってはいなかった

・魚の回収や運搬といった役割分担が行われず,生物のスムーズな移動がなされなかった

・捕獲した生物に対応できるだけの数・サイズの生物収容容器が用意されていなかったため、回収・選別作業に支障が出た

・生物の仕分け作業者(=水棲生物の知識を有する人)の不足は明らかであったため、NPOや番組スタッフが生物に詳しそうな人を急遽現地で集めた

・主催・進行側の人間が不足していたため,一般参加者への捕獲生物の紹介・説明等も行えない状態であった

この騒動に対してテレビ東京の小孫茂社長(66)は「前から言っているように丁寧に作らないといけない番組。そうしないと、いろいろなマイナス面、思わぬ事態を引き起こす可能性のある番組だけに念には念を入れた態勢をとって欲しいと現場にはお願いしました」と話している。

『ぎどら』氏がブログの最後にも書いている通り、今回の問題は、まさに番組スタッフと企画主催者たちによる〝準備不足〟に原因があったと言えるだろう。生き物をテーマにした番組が人気を博す一方で、生き物を扱うゆえ、それだけ番組作りにシビアになる必要がある。

4月から月1回のレギュラー放送が決まっている『池の水ぜんぶ抜く〜』。人気番組であっただけに、「打ち切り」や「封印」されてしまってはもったいないと言えるだろう。そのためにも、今後は〝在来生物を守る〟といった番組テーマと正反対のことが起らないことを祈りたい。

(文◎朝比奈ゆう)