【米国・テキサス州】LGBT労働者への雇用差別が合法だった結果…

カミングアウトできない理由

LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)という性的マイノリティーに位置付けられる人々――。先進国においては、人権や平等の名のもとに、性的な指向をもとに差別をすることはよくないという潮流が出来上がってはいるものの、実際のところ彼らは今も様々なところで差別を受けている、というのが現状のようだ。

その大きなものの一つが、就職や仕事先での差別だとされている。2016年に宝塚大学の研究室が行ったオンライン調査によれば、職場で差別的な発言を経験したことがあるLGBTの人々は7割を超えており、そもそも職場へのカミングアウト自体が3割未満にとどまっているとされる。現在、労働の場においても肩身の狭い思いをしているこうした人々にとって、一つの大きな節目となりうるであろう判決がアメリカで出たことで、注目が集まっている。

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アメリカ・テキサス州ダラス地区のローカルニュースであるダラス・モーニング・ニュースが10日に伝えたところによると、テキサス州南部地方裁判所において、LGBTの労働者は、雇用差別から保護されるべきであるという判決が出たという。同裁判所では、ニコル・ウィットマーという女性エンジニアが、自分がトランスジェンダーであるために、エネルギー会社であるフィリップス66に雇用されないと主張した件に対する裁判が行われていた。

この裁判を担当したリー・ローゼンタール裁判官は、ウィットマーの主張については「十分にその証明することができてない」という判決を出したものの、「もし明確な証拠があれば連邦法の下で訴訟を起こせるはずだ」という見解を合わせて示した。この根拠としては、連邦雇用法において、性別に基づく労働者の差別を禁じており、これが性的指向、あるいは性同一性にも適用されるというものであったという。こうした見解をテキサス州の裁判官が示したのは史上初ということだ。

ウィットマーの弁護士は、この判決を受け、「今回の判決が彼女(ウィットマー)にとって好ましいものでなかったことに失望している。だが、この希望の兆し(となる判決)は、トランスジェンダーであるために職場で差別されている人々たちにとって状況を定義する助けとなるだろう」と語り、現在の労働環境におけるLGBTの差別が即座になくなるわけではないものの、こうした性的指向によって職場で差別を受けている人たちに引用される判例になりえることを示唆している。さらには、「この判決は、まさに驚天動地だ…いい意味で」と、今後のこうした裁判におけるマイル・ストーンとなりえる判決であると声明を出している。

LGBT差別が合法な州が存在

アメリカの最南端であるテキサス州では銃規制などに関してもかなり寛容なことで知られ、保守的な気風が今も残る場所であると言われている。そうしたことも影響してか、現在の米国ではLGBTであることを理由に労働者を差別することを禁止している州が多い。しかしテキサス州などいくつかの州では、性的な指向や性同一性に基づき、雇用者がLGBTを理由に解雇することは合法という状態になっているのである。

だが、今回の判決が出たことで、労働環境においてのみならず、こうした州におけるLGBTへの認識事態も変わりゆくきっかけとなる可能性もあるだろう。

現在もなお同性愛であるというだけで死刑を受ける可能性がある国が、アフリカ北西部のモーリタニアをはじめ世界で6カ国存在し、さらには違法である国が70カ国にものぼるなど、LGBTへの逆風は強い。アメリカ国内におけるマイル・ストーンとなりうるこの判決も、そうした現状を今すぐに変えるものではないだろう。宗教や文化、様々な壁が立ちはだかる中、こうした性的マイノリティーに属する人々が、世界中どこにおいても完全な平等を手に入れられる日は、まだまだ遠いようだ。

(文◎コリス東条)