狙われるのは〝普通の子〟…AV出演強要がなくならない理由

ここ数年、問題となっている「アダルトビデオ(AV)出演強要問題」。人身取引のない社会作りを目指す、被害者支援のNPO法人「ライトハウス」などによると、昨年1年間の相談は過去最多の100件で、今年も11月末までで94件に上っているという。若い女性の性の問題というだけあって、表面化するまでに時間がかかったが、声を上げる被害者が少しづつ増えてきたことなどをきっかけに、内閣府主催のシンポジウムが開かれるなど、ようやく表面化してきている。それでもなお、その被害は急増の一途をたどっている。

かつて、AVに無理やり出演させられた経験のある女子大生のSさん(21)が語る。

「表参道を一人で歩いていたら、モデルをやらないかって男の人に話しかけられたんです。友達にも読モ(読者モデル)やっている人がいるし、多少興味はあったんで、とりあえず話だけと思って、男の人の話を聞いてしまいました」

しかし、いま思えば、それが〝過ち〟の始まりだったという。

「とりあえず『事務所で話がしたい』って言われて、事務所に行きました。誰もが知っているモデルの名前を挙げて、『彼女もうちの子だよ』って言われて、『すごい!』って思いました。もしかしたら、これで人生変わるかな、みたいな気持ちも少しあって、やってみることにしました。帰る時に『一応、ここにサインだけしておいて』と紙を渡されて、それを読もうとしたら、『普通のバイトと同じようなことしか書いてないから、そんなに読まなくても大丈夫だよ』って言われて、サインをしてしまいました。文章がすごく長くて、結局すべて読み切れなかったんです」

そして、事務所の人間に言われて、初めての撮影日を迎えた。

「最初、事務所に来てって言われたので行ったら、そこで『今日はAVの仕事だよ』って言われたんです。『え?』って思って、『それは嫌です』って断ったんです。そうしたら、『契約書にサインしたよね? いまさら辞めるって言ったって、違約金払えないでしょ?それに、スタジオ代とかカメラマンや男優のギャラとかも発生しているんだよ!それだけでも、100万円近くかかってるんだよ。もし、君の都合で撮影を止めるなら、それも負担しないといけない。みんなに迷惑をかけちゃうよ。』って言われて」

Sさんがサインした先日の紙片は、実は契約書で、そこには「自分の意思で撮影する」「撮影を断った場合には違約金500万円を支払う」という旨が書かれていたという。

そこから、プロダクションのマネージャーらによる1時間におよぶ説得が続いた。

「断ったところで、帰らせてくれるっていう選択肢がないことが分かりました。違約金が払えなければ、親に請求するしかないって言われて。親に迷惑かけられないし、誰かに助けの電話も出来る状況じゃなくて、結局、半分泣きながらAVの撮影をしてしまったんです。それしか選択肢がないっていう状況でした」

Sさんは数日後、「映像の使用をしないでほしい」という旨をプロダクションに連絡するも、受け入れられることはなかったと言う。

一方、かつてSさんのような女性をターゲットに、AVプロダクションでスカウトをやっていたY氏に話を聞いてみた。

「狙うのは〝普通の子〟です。それは服装で分かります。派手でもない、オシャレでもない子です。ミニスカートではなく膝丈くらいのスカート、もしくはジーンズ。ピンヒールではなく低めのヒール。派手な色の服ではなく地味目の色の服。髪の色は黒色もしくはオシャレではない茶髪。ブランド物ではない普通のカバン。流行の化粧ではない普通の化粧。顔もすごく美人でも不細工でもない。洗練されてない感じ。もっとも、それよりも狙いやすいのは、カバンのチャックが閉まっていなかったり、ヒールのかかとが擦れていたりする、要するに〝だらしない子〟です」

見た目だけで、その子が勧誘に乗りやすいかどうかが判別出来るという。

「〝普通の子〟にとって、モデルやアイドルって、やっぱり憧れの存在なんです。周りには言わないけど、実は憧れているっていう子はすごく多い。モデルやアイドルたちが、SNSで撮影風景や可愛い写真をアップしてもてはやされているのを常日頃から見ていますから。そういう人たちみたいになれるんだと思わせれば、必ず興味は持ってくれます。中には〝撮影〟っていう言葉だけで目を輝かせる子たちもいます」

一度、事務所に連れて行くことさえ出来れば、後は簡単だという。

「会話の中では基本的に夢を与えますから、その中でリスクを考えられる子は少ないですよね。契約書が大事であることを知らない子も多い。真面目な子であればあるほど、親バレを気にしますし、周りに迷惑をかけられないっていう責任感もある。だから結局、出演してしまうのです。また、普通の子って、AVを見たことすらない子も多くて、AVっていうのものが発想としてないから当然リスクとしても考えられないんじゃないですかね」

また、Y氏は、こうした悪質なスカウトが後を絶たない理由をこう語る。

「プロダクションからのギャラでしょうね。多い場合では、女の子1人が契約すれば”単体”で数本まとめての契約で数千万円。まぁ、それは宝くじみたいなもので、普通の子の場合”企画”というクラスになりますが、それでも1本あたり20~30万くらいになる。事務所にさえ連れていければ、ほぼ契約までもっていけますので、事務所に連れていくためには噓だってつきますよ」

AV出演強要問題は、まだ知識のない少女たちを利用しようとする悪質プロダクション、女の子を騙してでも報酬目当に群がるスカウトたちによって起きている。そして、夢や希望と引き替えに、精神的・身体的に搾取される少女たちが後を絶たないわけだ。

今年5月には、およそ200人の少女に対してAV出演を強要したとして、大阪府警はDVD販売サイト運営者の男を逮捕した。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。

少女たちにはこうした問題を広く知ってもらい、被害に遭わないことを願うとともに、悪質業者については、徹底的に摘発されることを願うばかりである。

(文◎朝比奈ゆう)