【実証実験開始】「妊婦向け席譲りアプリ」で日本人の優しさを問う

今月11日から無料通信アプリ「LINE」で始まった、あるサービスが話題となっている。それは、「席を譲ってほしい妊婦」と「席を譲りたい人」をマッチングするアプリだ。

東京メトロと大日本印刷、LINE、「&HAND(アンドハンド)プロジェクトチーム」は12月11日から15日までの5日間、東京メトロ銀座線の最後尾車両内で妊婦と席を譲りたい乗客とをLINEでマッチングする実証実験を始めた。

アプリの使い方はこうだ。この活動に賛同する人は、まず〝サポーター〟に登録する必要がある。事前に「&HAND」のLINEアカウントで〝友だち登録〟するのだ。その後、実験車両に乗車し、妊婦が「席に座りたい」というメッセージを「&HAND」のアカウントに送ると、サポーターに「妊婦さんが近くにいます。席を譲りましょう」というメッセージが送信される。すると、サポーターに〝席を譲る〟と〝今はゆずれない〟の選択肢が出てくるので、〝席を譲る〟と選択すると位置情報が伝えられ、座席を譲ることができるというもの。

ちなみに、今回の実証実験を行う車両と時間は以下だ。

 

東京メトロ銀座線 指定列車の最後尾車両

  • 上野駅 10時08分発→(途中駅乗降可能)→表参道駅 10時33分着
  • 渋谷駅 10時55分発→(途中駅乗降可能)→上野駅 11時23分着
  • 上野駅 11時08分発→(途中駅乗降可能)→表参道駅 11時33分着
  • 渋谷駅 11時55分発→(途中駅乗降可能)→上野駅 12時23分着
  • 上野駅 13時47分発→(途中駅乗降可能)→表参道駅 14時12分着
  • 渋谷駅 14時31分発→(途中駅乗降可能)→上野駅 14時59分着
  • 上野駅 14時47分発→(途中駅乗降可能)→表参道駅 15時12分着
  • 渋谷駅 15時31分発→(途中駅乗降可能)→上野駅 15時59分着

 

「&HAND」とは、社会人18人ほどの有志の集まりであり、それぞれ別の企業に所属するデザイナーやコピーライターなどで構成されている。そのチームが今回のアイデアの立案を行い、システム開発で実績にある大日本印刷がシステムを構築。そこに、東京地下鉄とLINEの2社が協力した形だ。

同プロジェクトは、今回の実証実験の元となった企画「スマート・マタニティマーク」で昨年、グーグル・ジャパンが開催する「Android Experiments OBJECT」でグランプリを獲得。今年3月には、LINEが開催する「LINE BOT AWARDS」も受賞している。

今回の実験では、「妊婦を助けたいと思うサポーターはいるのか」「実際に困っている妊婦が近くにいることがわかったら行動に移せるのか」「実際に行動をしたのはどのような人だったか」などを検証する。実証実験の結果を見ながら、将来的に妊婦だけでなく身体的・精神的に不安や困難を抱える人たちに席を譲る仕組みを構築していきたい考えだという。

妊婦や高齢者に対して席を譲る取り組みについては、電車の車内に優先席が設けられたり、カバンに付けることで妊婦であることを示す「マタニティ・マーク」を鉄道会社が無料で配布するなど、様々な取り組みがなされてきた。しかし、マタニティ・マークについては、「付けていることで席を譲ってもらえるどころか嫌がらせを受けた」という妊婦の声や、「権利を振りかざしている」といった反対の声も依然として存在。何事も新しい取り組みには賛否両論あるのが常であり、特にネット上ではいまだ議論されることも多いのが実情である。

今回の〝「妊婦さんが近くにいます」席譲りアプリ〟についても、ネット上では「恥ずかしがり屋の日本人にうってつけ」といった賛成の声もある一方で、「席を譲りたい人の数より妊婦の人数が多かったらどうなんの」といったサービスに対する疑問の声や「不特定多数に通知が入る→どうせ誰かが譲るでしょ→誰も立たない→終了」「ライン入れていない人だけ悪者みたいな扱いにされるのか」「有料で席を譲ります機能とか実現されたら面白そう」「こんなのないと席も譲れないのか」「妊婦モードにして遊ぶやつが多数発生する」「なんつー横着な」などといった、様々な立場からの意見が飛び交っている。

電車内では、いまだに優先席で下を向いてスマートフォン画面に注視している若者も多く、周囲に目もくれない人も少なくない。そしたことも、今回の取り組みでアプリというツールを使用した背景にあるのかもしれない。

そもそも〝気遣い〟や〝優しさ〟といったものは、自然発生的に行われるべき行為であり、誰かに強制されてやるものではないのかもしれない。しかし、こうした取り組みによって少しでも快適に過ごせる人が増えるのであれば良しというところか。〝「妊婦さんが近くにいます」席譲りアプリ〟の今後に注目したい。

(文◎朝比奈ゆう)