【残業監視システム導入】ものつくり業界が「働き方改革は絶対ムリ」

今月7日、大成・ブルーイノベーション・NTT東日本の3社は、ドローンを利用したオフィス内の残業監視サービス「T—FRIEND」のテストサービスを来年4月から、本サービスを同年10月から提供開始すると発表した。

このサービスは、退勤時刻になるとドローンが自動で離陸し、「蛍の光」の曲を流しながら、夜間のオフィスを決められたルートで自動巡回。搭載されたカメラで残業社員を監視・退社を催促する。録画された映像はクラウドにアップされ、遠隔地から確認ができ、誰が残業してるか確かめることが出来るというものだ。ドローンはオフィス内に置いた発信器との距離を頼りに、どこを飛んでいるのかを特定しながら飛行し、夜間、暗闇での警備に活用できるという。

GPSを使わないドローンを屋内で自動飛行させるサービスは、国内で初となる。大成の加藤憲博専務は「ドローンの飛行音はうるさいので、退社をしなければならない雰囲気作りに活用出来ると考えた。働き方改革を進める企業にサービスを提供したい」と話している。

今後はAI(人工知能)で誰が残業しているのかを自動で検知するシステムの導入も検討しているという。

2015年12月、電通の女性社員が異常な就労環境を苦にして自殺をした件(その後、過労死認定)や、NHKの女性記者が過労死した件などを受けて、昨今の〝働き方改革〟はものすごいスピードで加速していると言えるだろう。その内容として、これまでに育児休暇を設けることはもちろん、労働時間をフレキシブルにするなど様々な取り組みがなされているが、特に多くの会社が注力しているのは〝残業時間の削減〟である。その結果、「ノー残業デー」を設けた企業の他、残業する際には上司に申請をしなければならず、申請せずに残業していると人事部からアナウンスされるようにした企業が出現。ほかにも、残業チケットなるものを発行し、6枚以上使うとペナルティーが科させる企業や、残業する際にはそれがわかるマントを着用させる企業など、とにかく企業側は残業させないことに必死であるようだ。中には、残業をしなかった分、インセンティブとして賞与が与えられる企業まで存在する。

しかし、こうした〝働き方改革〟の中には、「いかに残業をさせないか」が目的となっているものも少なくない。

大手IT企業に勤めるSさん(25)は、一方的に押しつけられる働き方改革に混乱しているという。

「ある時、突然上司から『来週から残業は一切禁止する』と言われました。しかし、求められる結果は、今までと同じです。そもそも、我々はこれまで無駄に残業していたわけではないのですから、時間内に仕事が終わるわけがありません。なので、みんな仕方なくこっそり残り、残業をしていないことになっています。残業をしないためにどうしたら良いかという議論もありませんから、本当に形だけの働き方改革ですよ。どうすればいいか、現場は混乱しています」

また、働き改革を行う側である中小企業(製造業)の経営者Hさん(51)は、「個人の能力の向上が必要不可欠だ」と話す。

「もちろん、社員にとってより良い労働環境にするために、長時間労働の是正をするなど企業として努力はしていくべきです。しかし、労働時間だけに焦点を当てるのではなく、同時に〝生産性の向上〟がなくては企業としては成立しません。時間内に結果を出せない人間ばかりでは当然赤字です。でも長時間労働はさせらない。となると、時間内に結果を出せる人間だけが必要とされる。もしくは、そうできるように能力を向上させなければならない。厳しい言い方になりますが、残業しないと結果が出せない人間は必要とされなくなる」

そもそも安倍内閣が提唱している〝働き方改革〟とは、①労働生産性の向上、②非正規雇用の格差改善、③長時間労働の是正である。企業としては、長時間労働の是正だけでなく〝労働生産性の向上〟も同時に行われる必要があるのだ。

「どうしたら短時間で結果が出せるようになるのか」

こうした議論を、管理者や現場の人間が一体となって行っていかなければ、本当の意味での〝働き方の改革〟にはならないのではないだろうか。

また、今の働き方改革の方針はそもそも〝ものづくり業界〟には適さないと話すのは、中小企業の映像制作会社を経営するAさん(47)だ。

「残業の削減に対する取り組みなど特にそうですが、そもそも今の働き方改革は〝時間で働く業界〟の話です。決まった労働時間はありますが、我々は〝時間に対する対価として給料を払う〟のではなく〝作品を作ったという結果に対して給料を払う〟業界にいるのです。つまり、いくら決まった時間分働いたとしても、作品が出来なければ意味がない。しかも、早朝や深夜に撮影が行われたりと勤務が不規則になることも多い。こういった業界が今後働き方改革を進めていくためにはどうすればいいか、同業者の間で模索中です」

来年にも始まるドローンによる残業監視・退社を促すサービス。その頃には、今よりももっと〝働き方改革〟は加速しているだろう。

働き方に対する考え方の大きな転換期を迎えている昨今。形だけではなく、業界や業種にあった制度、そして本当の意味での“働き方改革”が求められている。

(文◎朝比奈ゆう)