死亡者続出の伝統行事「インド・ジャリカットゥ」の未来

世界各地で古来より続いてきた祭礼。もともと宗教的な儀礼であったこうした祭礼は、現在は世俗化されたものがほとんどで、本来の主旨からは乖離して皆で楽しめるものが多くなっているもの多い。一方で、今でもよそ者を受け付けないなどの厳格なしきたりがある祭り、あるいは危険な行為を強いる祭りなども、それなりに現存しているのが実情である。

日本においては、長野県の諏訪地方で行われる御柱祭などが危険な祭りとして知られているが、インドにおいては、危険すぎて過去に一度中止された祭りが復活を遂げ、新たに死者が出たことで問題になっているという。

BBCが17日に伝えたところによると、インド南部のタミル・ナードゥ州で行われた「ジャリカットゥ」という祭りで、少なくとも今回3人が死亡、60人以上が負傷したという。この祭りは、南インドの収穫祭であるポンガルの日に行われるもので、角に金貨をつけた牛が走り抜けるのを男たちが追いかけ、角から金貨を取った者が勝者として称えられるというものである。

この祭りは過去、危険であることに加え、祭り自体が動物への虐待であるとみなされ、2014年にインドの最高裁判所によって禁止処分になった。だがその後、タミル・ナードゥ州ではジャリカットゥの再開を求めるデモなどが相次いだことから、昨年に禁止を解除されていたのだ。

この祭りでは、長年にわたり牛の角で突かれたり、踏みつぶされたりして多くの死傷者が出ており、多い時は観客を含めて数百人以上が負傷することもあるという。

こうした祭りに対し、動物愛護活動家たちは、群衆の中に解き放たれ、自分に乗ろうとしてくる人々を追い払おうとすることで、牛に余計なストレスがかかると主張。これを祭礼開催に反対する主旨としているが、インド政府は「伝統的な文化の維持と、インド在来種の牛の生存や繁栄にとって、この行事は重要である」との声明を出している。

このジャリカットゥに非常に近い問題として有名なものが、スペインなどで知られる闘牛の問題であろう。こちらも牛と闘牛士が戦うという同じ性質のイベントだが、闘牛は牛を剣や槍で死に至らしめるというもので、その性質上、動物愛護団体などから大きな批判を受けることとなり、多くの地域で禁止されるに至っている。そのため、現在は向かってくる牛を曲芸師などがかわすだけのショーや、さらにはそのかわし方に関する芸術点や技術点を競う「ブル・リーピング」という競技が考案されるなど、伝統と現代社会の制約の折り合いをつけるよう、形を変えつつあるようだ。

これに比較し、ジャリカットゥは牛を殺害するわけではないものの、代わりに多くの死傷者が出るという問題を抱えている。

果たして、このジャリカットゥは、こうした欠点を「伝統」の一言で乗り切り続けるのか、それとも現代社会に適合した形に変わっていくのか、あるいは再び廃れてしまうのか。今後が注目されている。

(文◎コリス東条)