世界各国で続出? 「レーシック難民」の次は「膣メッシュ難民」

「レーシック難民」という言葉を聞いたことはないだろうか。これは、視力回復のために行われる外科手術「レーシック」を受けた人が、術後に頭痛やめまい、光に対して過敏になりすぎるなど、数々の後遺症に悩まされる人々が多発したことを受けて生まれた言葉である。このように、こういった医療分野では、新しい医療技術が用いられだしてしばらくすると問題が発覚することが往々にしてあるが、現在、また新たな「難民」が生まれたと注目を集めている。

BBCが先月27日に、通称TVM(Tension-free Vaginal Mesh)手術と言われる「膣メッシュインプラント手術」を禁止するべきだという勧告を、英国国立医療技術評価機構が出したと報じている。さらに今月8日には、その勧告に対して外科医が反論するなど、イギリスではTVM手術について様々な議論が交わされているという。

このTVM手術とは、女性特有の「骨盤臓器脱」という症状への対策として、近年新たに行われるようになったものだという。

骨盤臓器脱というのは多くの女性を悩ませる不具合のことで、骨盤底筋群という内臓を支える筋肉が出産などによって損傷、あるいは老化などにより強度が弱くなるなどすると、膣を通じて膀胱や直腸、子宮などが落ちてきてしまうというもの。これにより、排便困難、便秘、異物感などの症状を生じるという。

この治療法としては、内臓を元の位置に戻したのちに、骨盤底筋群を修復するという手術が行われてきたが、これも一定の割合で再発してしまうという欠点があった。その欠点を克服した新術式として、欧米で2000年あたりから行われるようになっていたのが、骨盤底筋群にポリプロピレンでできたメッシュという人工素材を入れて強化するというTVM手術である。この術式は、従来のそれより体の負担や術後の痛みが少なく、人工素材の耐久性が高いために再発率も低いとされる、理想的な術式として注目を浴び、術式を受ける患者も増えたていた。しかし、最近になって、慢性疼痛などの副作用が存在することが発覚。BBCの先月27日の記事によれば、07年4月から15年の3月までの間に、イギリスでは92000人以上がこの手術を受けたうち、11人に1人がこうした問題を抱え、「膣メッシュインプラント難民」と化しているとされる。このため、スコットランドにおいては、この手術の安全性が確認されるまではこの施術を禁止するという措置が講じられ、イギリスでこのTVM手術は、大規模な医療問題として取り上げられ続けているようだ。

同じく上述の記事によれば、ロンドンのキングスカレッジ病院の外科医であるリンダ・カードーゾは「完全に禁止することで、少数派ではあるが、恩恵を受ける可能性があるものを提供できなくなる」と、あくまでも技量の確かな医者が最適な場合のみ行う分には許可をすべきとの主張を展開している。

日本においては、冒頭に述べたレーシックや子宮頸がんワクチンなどで同様の問題が起きて注目されている。医療技術が日々進歩し続ける現代社会において、こうした新しい医療行為における有用性とリスクのデリケートな問題は、これからも避けえぬ問題として存在し続けることになりそうだ。

(文◎コリス東条)