【イタリア】家族3人が死亡、5人を瀕死に追いやったあの〝劇薬〟

今月7日夜に起こった富岡八幡宮の女性宮司ら3人が日本刀やサバイバルナイフで殺傷された事件が世間を賑わせている。犯人と目される男は、殺された女性宮司の弟であり、中学時代から不仲が続いていたとされているが、イタリアでも同じく家族を殺害する事件が起きて、現地に衝撃を走らせているという。

abcNEWSが7日に報じたところによると、イタリア・ミラノ近郊に住むマティア・デル・ゾットという27歳の男が、同居する家族に毒性の強い重金属タリウムを飲ませて3人を殺害、5人を入院させた疑いで逮捕されたという。死亡したのはデル・ゾッドの祖父母と叔母で、祖父母は夏の終わりごろから神経系に異常を感じるようになり、10月に死亡したとされている。ほかにも、家族5人が同様の症状により入院しているようで、デル・ゾッドによりタリウムを飲ませられていたと思われている。

劇薬・タリウム

警察は同日にデル・ゾットの家で家宅捜索を行い、タリウムの試料瓶の他、家族が飲んだ紅茶に微量のタリウムが付着しているのを発見。これを問いつめたところ、デル・ゾットは罪を自白したという。

軍警察の隊長であるマヌスエト・コンセンティーノによると、捜査員らは動機について理解を得ようとしている最中であるとのことである。デル・ゾット本人は精神病の既往歴もなく、信心深い人間として知られていたという。だが、最近彼は以前に較べて内向的になっていたと家族は語っており、母親によれば「デル・ゾットはカルトの影響を受けているように思える」と捜査員に語っていたという。さらに、検察官によれば、「彼は汚れた人々を罰したいと語っていた」とも伝えられている。

このタリウムとは、古くより殺鼠剤として使われていた劇薬で、無味無臭で水に溶けやすいという性質を持つことから、しばしば毒殺などにも使用されてきた。これを用いた殺人で世界的に有名なのは、毒殺の過程を詳細に記した日記を残したことで知られるイギリスの殺人犯、グレアム・ヤングがタリウムを茶に混ぜて同僚を殺したとされる事件であり、これはしばしば世界各国で模倣されている。日本においても、2005年に静岡県の高校生がタリウムを母親に飲ませ、その経過をブログで綴るという、まさにヤングを模倣した手口を行い逮捕された事件や、14年に女性を殺害したとして逮捕された名古屋大生が、12年にタリウムを飲み物に混入して中学や高校の同級生に飲ませたことが発覚した事件など、度々殺人や殺人未遂に用いられたことでご存じの方も多いだろう。

こうした毒物はもちろん、世界各国において厳しく規制されている場合がほとんどだが、銃と同じく、手に入れる抜け道は確実に存在しているのが現状だ。今回の事件や過去のもののように、タリウムという毒に魅せられたがゆえの凶行が、自身の身の回りで起こらないことを祈るほかないのかもしれない。

(文◎コリス東条)