ドーピングだけじゃない、「HIV大国」と化したロシアの実情

国ぐるみのドーピングが行われているとされ、平昌オリンピックへの出場を差し止められたロシア。WADA(世界反ドーピング機関)によると、組織的な隠蔽に関与または恩恵を受けていた選手はパラリンピック競技を含めると1000人を超えると報告されており、まさに〝クスリ漬け〟だったことが明らかにされた。

そんなロシアに関する話題を、6日にNewsweekが報じている。同誌によると、ロシアにおいて現在HIVの感染数、及び死亡数が爆発的に増えているというのである。WHO(世界保健機関)が欧州地域において、2016年度に新たにHIVに感染した報告のうち、62%にあたる10万3438例がロシア国内のものであったとされるというのだ。さらに同じ6日には、ロシアの消費者権利監視団体が、「国内のエイズ患者が1%弱増加したと発表した」とロシアの国営通信社であるイタルタス通信が報じているという。

このロシアにおけるHIV流行の背景に、この病気に対して一般的な国民が〝ゲイか重度の薬物使用者がかかる病気である〟という、HIVが発見された当初から変わらない偏見を抱き続けるという、あまりに保守的な状況もある。〝静かなる流行〟と定義付けられているのだ。SNSなどには、HIVという病気そのものの存在や、国内に数多くの感染者がいるということ自体を否定するような団体も多く存在しており、彼らは既存のHIV感染者に対する医療行為が、実際はこうした人々に有害であると主張することも多いそうだ。

HIV患者を救うべく募金を呼びかける女性たち

格差是正や支援活動などを行う非営利団体であるスベッチャ財団のディレクターであるエカテリーナ・ジンガー氏は、こうした状況について「ロシアではテレビで、いかにロシアが敵に囲まれているか、そして国民たちはいかに戦わなければならないかを話し合っている」と語り、それが誤った情報を受け入れてしまう基盤になっていると分析している。加えて「もっとも大きな原因は、相談の不足であり、人々は十分な情報を手に入れられないと、誰かが何かを自分たちに隠していると考えるようになる」と、ロシア国内でHIVに対する正しい認識が広まっていないのが、偏見を産む温床になっているとも語っている。

こうした現状は、ヨーロピアン・エイズ・トリートメント・グループというヨーロッパのエイズ患者支援団体もウェブサイトの記事で詳しく触れられている。その記事によれば、ロシアにおけるHIVの感染は「死刑判決にも等しいもの」として受け取られる場合が多く、実際にHIVに感染していることを当人に伝えても、それを否定する、あるいは治療を拒否するというようなケースが多数にのぼるという。

アフリカなどの発展途上国において、違った知識や偏見、迷信などが広がっていることは有名だが、ロシアのような大国が同じような状況に陥っていることには、何かしらの国家的な問題があるのではないかと思ってしまう部分があるのは否めないだろう。

ドーピングとHIVのパンデミックに頭を抱えるロシア。2つの難しい問題をロシアがどう処理していくのか、今後が注目されている。

(文◎コリス東条)