【貧困風俗嬢シリーズ②】高学歴など役に立たないアラフォー女の現実

都内の風俗店で働く女性たちを通して、今の日本のリアルな姿を描く「貧困を生きる風俗嬢シリーズ」第2弾。今回は、アラフォーを前に風俗店で働くことを余儀なくされた女性に話を聞いた――。

新宿駅から徒歩5分。オフィス街の中にぽつんと建つ雑居ビルの一室に、彼女が在籍する派遣型風俗店(ホテヘル)の事務所兼待機所はある。ここに勤務する桜井琴美さん(仮名・43歳)は、風俗で働き出して4年目になる女性である。

一見、〝保険の外交員〟といった印象を与える桜井さんを、最初から風俗嬢と見抜く人は少ないのではないだろうか。知的かつ優しそうな雰囲気を持ちつつ、質問への受け答えは明瞭であり、とてもスマートな印象だ。下品にならない程度に施されたメークからは、風俗嬢にありがちなだらしなさは感じられず、〝ちゃんとした人〟であると感じさせる。どこから見ても、およそ風俗で働いているようには見えない装いなのだ。

それもそのはず、桜井さんは偏差値65以上の〝一流大学〟を卒業し、かつて〝大手企業〟に勤めていたエリートなのだ。そんな彼女が、現在なぜ風俗店で男たちに奉仕しているのだろうか。

子どもたちのためにこの日も出勤するという桜井さん(仮名)

埼玉県出身の桜井さんは、都内の有名大学を卒業すると、大手IT企業に就職。順調にキャリアを重ね、27歳で同僚だった男性と結婚すると同時に寿退社をしている。その後、2人の子どもを授かった。旦那は高収入。まさに、絵に描いたような幸せな結婚生活を歩んでいたはずだった。

しかし、桜井さんはその後、旦那の〝ある行動〟を理由に、幸せな結婚生活の放棄を決意。39歳にして離婚するという道を選択する。

旦那の〝ある行動〟、それはDVだ。

「結婚して、しばらくは何不自由ない、幸せな生活でした。しかし、数年してから、旦那が乱暴になってきたんですよ。怒るとすぐに物を投げたり、壁を殴って穴を開けたりするようになったんです。別れる時にはDVかDVじゃないかで、かなり争いました。結局、お金より別離することが大事と考え、子どもたちの養育費は不要という約束で離婚に合意しました。いま思えば、せめて養育費だけでももらっておけば良かったなとは思うんですけどね」

12年連れ添った旦那と別れ、12歳の長女と10歳の長男を連れて、3人での新生活をスタートさせた桜井さん。金銭的な不安もあったことから、実家に暮らすことも考えたが、そこは駅から徒歩20分以上と交通の便が悪く、子どもたちの教育上よくないと判断し、実家近くにアパートを借りることにしたという。

しかし、心機一転、新しい生活を始めるために仕事を探し始めた矢先のことだった。桜井さんの母親がくも膜下出血で倒れ、同時に軽い認知症を発症。日常生活の上で介護が必要になったのだ。父親は数年前、すでに他界しており、面倒を見られるのは桜井さんだけという状況。1日2回、2時間だけヘルパーを頼むことにし、なるべく時間の融通が利く仕事を探したという。

「自分で言うのもアレなんですけど、●大学(有名私大)出ているし、自分では『なんとかなるだろう』ってどこかで思っていたんですよね。でも、実際に探してみたら、びっくりするくらい仕事がないんですよ。39っていう年齢だと、本当にどこも雇ってくれない。しかも、母親の介護があるので、ある程度の休みや勤務時間の融通が利く仕事でなければやっていけなくて。さらに、ある程度の収入がなくては家計が回らない。そんな条件を満たす仕事なんて皆無なんです」

母親のヘルパー代、病院代、薬代だけでも、月に7万円近くかかる。それに加え、アパートの家賃、食費、光熱費などを足すと、月に20万円くらいはすぐに出ていってしまう。ここに、2人の子どもたちの教育費が上乗せされる。かかる費用は、これだけにとどまらない。

「子供たちも(大学)進学を希望していますし、私としても絶対に大学に行かせてあげたいんです」

そんな時、目に飛び込んできたのは〝高収入アルバイト募集〟のサイトだった。

「風俗で働くなんてことは今まで考えたこともなかったので、求人募集を見た時に、『そういえば風俗っていう仕事があったね』っていう感じでした。最初は、もちろん強烈な抵抗がありました。だけど、当時は、本当にそれしか選択肢がなかったという感じだったんです」

苦渋の決断の上、風俗の世界へと足を踏み入れ4年が経とうとしている。今は、週に3~4日、1日平均7時間ほど出勤し、その合間に母親の介護と子供たちの世話をしているという。

「自分でも、数年前には考えもしなかった生活を送っていますね。今でもこの仕事をしてることに葛藤がないと言ってはウソになります。でも、この仕事なら、介護も、子育てをする時間も出来るので、もう少しここで頑張るつもりです。支えは、子どもたちだけですね。あの子たちのためだと思えば、頑張れるんですよ」

桜井さんの話を聞いていると、高学歴だからといって決して幸せな人生が保証されるわけではないということを痛感させられる。女手一つで2人の子どもを育てなければならないということは、それだけ〝足かせ〟があるということを理解する必要があるだろう。もともとどの企業も中年女性の雇用に積極的であるはずもなく、そこに子どもがいて、さらに親の介護もしている〝融通の利かない中年女性〟なのだ。

しかし、これは決して特別な事例ではない。多くの女性が直面している問題であり、これから直面する可能性のある問題である。

もし、風俗に足を踏み入れようとしている時の桜井さんに出会っていたら、果たして今の日本社会は他の〝選択肢〟を提示してあげられたのだろうか。また、その〝選択肢〟が本当に今の桜井さんの現状を救えるものだろうか。

今の日本を俯瞰した時に、彼女の未来はそうとう暗いと思えてならないのだ。

(文◎朝比奈ゆう)