【座間男女9遺体事件】女性を食い物に悪徳スカウト業者の罪

10月30日に神奈川県座間市内のアパートの一室で、切断された9人分の頭部や骨などがクーラーボックスに詰め込まれた状態で発見された近年稀に見る猟奇的な殺人事件。その翌日、この部屋に住む白石隆浩容疑者(27)が逮捕されたが、この一連の犯行が表面化したのは、被害者の一人である田村愛子さん(23)の兄の執念の賜物であった。

田村さんは自身が入居していたグループホームから医者に行くと言い残し、先月21日から連絡が取れなくなっていた。彼女の兄が愛子さんのツイッターの履歴から白石容疑者とのやり取りを発見。自身が同アカウントから情報提供を求めたところ、ある女性から「私と同じ状況」との連絡が入り、その協力者の女性(おとり)が白石容疑者と待ち合わせしたところ、そこに白石容疑者が現れ、張り込んでいた警察官2人が尾行して自宅を特定。そこを捜査員が任意で事情を聞き、事件が明るみになった。

当初、9人分にものぼる頭部や骨などは身元の特定に時間が掛かると思われたが、アパートには彼女たちの携帯電話、キャッシュカードなどがあったため、遺族から提供されたものと照合した結果、今月10日になって男女9遺体の身元が明らかになった。

遺体となって発見されたのは、次の9人であった。

須田あかりさん(17歳・福島県福島市)

石原紅葉さん(15歳・群馬県邑楽町)

久保夏海さん(17歳・埼玉県さいたま市)

更科日菜子さん(19歳・埼玉県所沢市)

藤間仁美さん(26歳・埼玉県春日部市)

田村愛子さん(23歳・東京都八王子市)

丸山一美さん(25歳・神奈川県横浜市)

三浦瑞季さん(21歳・神奈川県横浜市)

西中匠吾さん(20歳・神奈川県横須賀市) ※年齢は行方不明当時

 

この9人を手にかけた白石容疑者とは何者なのか?

白石容疑者が逮捕前、歌舞伎町などでスカウト行為により収入を得ていたのは、各メディア報道にある通りである。白石容疑者は昨年の7月から9月にかけて、自らが所属していたスカウト(職業紹介)会社「EXCELLENT」代表と共に、茨城県神栖市のデリバリーヘルスに3人の女性を斡旋。売春の周旋で得た違法な金であると知りながら、同店へ女性従業員紹介の名目で383万1000円を3回にわたって偽名で受け取った件で逮捕歴があり、現在は執行猶予中であった。筆者が得た情報によると、白石容疑者は色々な不始末が重なり、表でのスカウト業が困難であったという。

では、スカウトとは何か?

「モデルになりませんか」「お金稼げますよ」など、様々な手練手管で繁華街を歩く若い女性に執拗に声を掛け、仕事を斡旋することが主な職務である。スカウトたちが女性を送り込む先とは、モデル業もあるだろうが、だいたいがチャットレディやガールズバーといった軽めの仕事から、キャバクラ嬢などの水商売、そして体を資本にする風俗店やAVまで、多岐に亘る。

「女性の容姿次第でも、送り込む店をいろいろ変えています。それと、容姿の完璧な女性は引っ掛からないので、どこか隙のある女性、一人でブラブラしている暇そうな女性とか、すり切れた古いブランドバッグを持っている女性とかを狙いますね」(歌舞伎町のスカウトマン・A氏)

スカウトたちは、そんな女性たちを店に斡旋することで収入を得るのだが、その仕組みには2種類ある。スカウトした女性を店に斡旋し、毎月その女性の売り上げから数%を継続的に受け取るものと、女性をそのまま店に〝売り払う〟システムだ。

前者は、女性をより稼げる店に送り込もうとするため、悩みなどを優しく、親身なふりをして聞くという。白石容疑者の逮捕の報を受けて取材に答えたかつての交際女性が「優しかった」と答えているのは、この伏線があったからだろう。一方で女性を売り払う場合は、以降やり取りすることはないそうだ。

では、スカウトたちは女性を斡旋して、どれほどの収入を得ているのか?

「スカウトの取り分は、自分の場合、女性の売り上げの5%ですね。これが、その女性が店を辞めるまで続きます。高いと思われるかもしれませんが、女性が店に文句があったら場合は自分を通じて話し合いをしますし、相談に乗ったりもします。まあ、コンサル料です。売っちゃう場合は、借金を背負っている女性が多いです。その手の女性とは、基本的に二度と会うことはないから、割り切って斡旋しますよ。それに、自分らの〝後ろ〟はしっかりしているので、頼む側は安心なのでしょう」(前出・A氏)

〝後ろ〟とは、俗に言う「ケツ持ち組織」のことである。

現在も繁華街でスカウトや客引きをする場合は、必ずその場所を仕切る組織に話を付けないといけない。簡単に説明すると、彼らは「ここからここまでは客引きをしてもいい、スカウトをしてもいい」と組織から許可をもらった上でやっているのだ。これは、いくら暴力団対策法や暴力団排除条例などの法律、条令が施行されたとはいえ、現在も守られ続けている暗黙の事実である。

こういったスカウト、客引き行為は迷惑防止条例に該当する。現在では全47都道府県および一部市町村で、「迷惑防止条例」あるいは「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」などの名称で定められている。スカウト行為は斡旋業務に抵触し、職業安定法63条2号の公衆道徳上有害な業務に該当(東京地方裁判所平成6年7月8日判決)するのだ。

つまり、「女性の人格を無視している」というのである。現在アダルトビデオ(AV)への不当な出演強要など問題視されているのは、この判例が背景にあるからである。

スカウトは、このAVにも女性を紹介している。白石容疑者も関わっていたのだろうか。

「AVは現在、完全に供給過多。女の子が余っていますよ。自称も含めて、いま全国に3000〜4000人のAV女優が全国にいると言われていますが、その中で本当に稼げているのは、ほんの一桁でしょうね。稼げると言っても芸能人などと違い、単体女優でも1本最低30万円と言われる時代です。まとめて企画モノに出るキカタン(企画単体女優)の子は、1本数万円です。そんな女を扱っても、うま味はないんですよ。だから所属だけさせておいて、ライブ配信とかやらせてチャットレディとかで日銭を稼がせている子が多いかな」(A氏)

元国民的アイドルグループに所属していたことが売りの女優は契約金が1億円、聞いたことがあるという程度の女優の契約金が数千万円と言われている中、一般人では数十万円、何年もかけて数百万円稼ぐのが関の山だ。それならば整形手術を受け、自らのステージを挙げて単体女優の道を目指す子が多いのも頷ける話である。

こうしてみると、一般社会とAVの世界を、スカウトたちが繋いでいることがおわかりいただけるだろう。それゆえ、街頭でのスカウト行為はいまだに後を絶たないのだが、現在は各繁華街でパトロールが行われ、スカウトたちが生息できる場所は少なくなっている。街とヤクザに睨まれたら、もう街頭でのスカウトは出来ない。では、彼らはどこへ向かうのか?

それは、縄張りのないネットの世界である。白石容疑者のように、特に居場所を失ったスカウトたちはSNSなどで色々な情報を発信。また、女性の悩みを聞くふりをして、精神的、金銭的に困っている女性に物色し接触をするのだ。

白石容疑者は、「死にたいと言っている女性は一人もいなかった」と供述しているという。特に、思春期を抜けきれない女性は、このようなことを話す傾向が強い。ただ書くことによってストレスが発散され、そこに悩みを聞いてくれる、理解を共有してくれる人間がいたら……。

いつの時代にも、人の弱みに付け込んで心の中に踏み込んでくる人間は多い。

それを見抜くのは、社会的経験が浅い女性には難しいことであっただろう。

被害者の冥福を祈りたい。201