【米国発】息子を警察官に〝射殺された〟父親が新聞で調査再開を要請

警察は、犯罪から一般市民を守ってくれる〝正義の盾〟である。だが、時にその〝正義〟が暴走して、一般市民に危害を加える場合もあることを、我々が心に刻んでおくべき事件が起きてしまった。

日本において、2007年9月に佐賀県佐賀市で起きた知的障碍者の青年を5人の警察官が押さえつけて死亡させたとされる事件が有名だが、こうした事例に関してはアメリカにおけるものが非常に多く、ワシントン・ポストによれば、2017年には警察官に殺された市民の総数が約1000名にのぼるという。もちろんこの中には、実際に警察官に危険が及んだ事例もあったのだろうが、あまりにも多すぎる数字だと言えるのではないだろうか。そんなアメリカの警官による射殺事件の一つで大きなアクションが起こり、世界的な注目を集めている。

CBSが30日に伝えたところによると、アメリカ・ウィスコンシン州に住む男性が、ワシントン・ポストに自費で一面広告を載せ、彼の息子の死亡に関する調査を再開するように呼び掛けたという。この広告には64259㌦(日本円にしておよそ700万円)がかかっている。

 

広告を出したのはマイケル・ベルという男性で、彼の息子であるマイケル・ベル・ジュニアは、2004年の11月9日に警官に頭を銃撃され死亡した。警察の報告書によれば、その日、マイケル・ベル・ジュニアは警察に車を止められたが、酩酊していたため警察に非協力的だったという。そこから、つかみ合いなどの一悶着に発展した後、警官は私道に車を寄せ、マイケルを拘束。その際に一人の警官が、「彼は私の銃を持っている!」と叫んだという。その後、別の警官が駆け付け、マイケル・ベル・ジュニアの頭を撃ち、彼は3時間後に死亡したようだ。

マイケル・ベルと彼の家族は、警察の内部捜査に意識を呼び起こすために購入した看板の近くに立つ

 

地域を担当するケノーシャ州の警察署長は、この事件について「正当なものである」と声明を発表。しかし、父のマイケル・ベルは独自に調査を行い、当時の警官と息子ベル・ジュニアの位置取りなど、警官の主張が事実と異なっている部分を発見。さらに、ベル・ジュニアが警官の銃を奪おうとしていたのではなく、車のミラーにホルスターのベルトをひっかけてしまった警官が錯誤したのではないかという主張をし、実際に検証も行うなどしている。

だが、マイケル・ベルが郡や州、連邦の当局者にこうした主張を伝えたものの、どこも動くことはなかった。そのため現在、マイケル・ベルはこの事件についての再調査を要請する機会を失った状態にあるという。

「この苦しみは、経験した者しかわからない」

「(こうした警官による射殺に対する)意識改革をもたらすために、どれほどのものが必要なのかは誰もわからないが、こうやって声をあげるのが私の義務である」とマイケル・ベルは語っている。

ベル・ジュニアを撃ったとされる警官は今もなお警察に雇用されているというが、「銃を持っている」と叫んだ警官は2010年に自殺しているという。

こうした警官や国の責任を問う裁判や告発の成功率が低いということは、おそらく万国共通で、日本においても警察に対する国家賠償訴訟の勝率はわずか6%にとどまるという。果たして、世界的な注目を集めたこの事件が、14年の時を経て再調査されることがあるのか。今後も深く見守っていきたい。

(文◎コリス東条)