【無銭飲食650円で逮捕】寒い冬に軽犯罪の逮捕者が続出する裏事情

年も残すところ約1カ月。そんな折に、この季節の「恒例行事」とも言える事件が起きた。

福岡県柳川署の警察官によって現行犯逮捕されたのは、住所不定で無職の男(63)。逮捕容疑は詐欺の疑いだというが、共同通信により配信されたニュースによると、この男は柳川市の食堂でカツ丼を1杯(650円)食べたものの、料金を支払わなかった。男は食事を終えると、店主に「金がない、警察に通報してくれ」と告げ、店主から「支払いは今でなくてもいい」と言われたが、自ら公衆電話で110番したという。

冒頭に記したが、何が「恒例行事」なのかというと、年末年始を留置場で過ごそうとする人間による軽犯罪である。

この逮捕された男のような住所不定の人間にとって、三食付いた刑務所は「天国」と錯覚させる場所なのかもしれない。たとえ普段ひもじい思いをしていても、正月くらいは三食屋根付きの場所で過ごしたいというのもあるのだろう。

では、彼らにとって憧れの場所である刑務所では、どのような生活が待っているのだろうか。

この男のように住所不定であれば、刑務所が天国に感じるのかもしれない。

彼らが過ごす刑務所には、「懲役刑」と「禁固刑」の二種類がある。懲役刑とは、普通に刑務作業や運動をしながら過ごすもので、禁固刑とは労働の義務はないため、独居の中で自由が奪われる刑である(希望すれば働くことができ、作業報奨金も得られる)。

刑務作業は1日8時間。働いた賃金は当然労働者、この場合は受刑者に支払われる。

「それなら、なぜ出所してお金がないのか?」と思うかもしれないが、刑務所の中では身の回りの品、図書の購入など、何かとお金が必要だ。とはいえ、その購入以前に、作業報奨金はあまりにも安い。

今年の春に出所したA氏に、刑務所内の様子を聞いた。ちなみに、A氏が服役した理由は●●●●である。

「作業の種類にもよりますが、自分の場合は月給4000円程度でした」

毎週5日(週休2日制)、1日8時間労働して、この金額はなぜなのか。それは、刑務所独特の計算方法があるからだ。

刑務所には、10等工から始まって1等工まで、10段階にランク分けされている。一番上の1等工でも時給に換算すると41円90銭で、最低の10等工では5円90銭である。

1等工の受刑者が手にするのは1日働いて335円20銭であり、1月を4週で計算すると6704円を1カ月で手にすることになる。しかし、この1等工は特別なレベル、特殊資格の持ち主で達せないと、前出のA氏は言う。

「10等工から始まって、徐々に上がっていくんですよ。数ヵ月でようやく9等工に上がるれるかどうかという世界です。それで工場の親父(刑務官)のチェックが入るんです。『こいつは真面目にやっているか?』などを査定して、〝割り増し〟という加算金を足していきます。それとは別に、累進処遇(受刑者の自発的な改善努力を促す)によって1類~5類という優遇措置があります。しかし、態度が悪かったりすると上へ行けず、いつまでも万年3等工とかの受刑者は多いですね。自分もそうでしたから。ですから、仮に報奨金を毎月5000円もらっても、日用品とか本とかの購入で、それ以上に使ってしまいます。衣服などは支給されますが、シャバにいる人に手紙も書きたい。すると切手、封筒、ボールペンも決められた価格で買わざるを得ない。そうしたら本当に残らないですよ」

これでは、刑務所を出所できたとしても、受刑者を待つ人でもいない限り、出所後にジリ貧の生活を強いられるはずだ。合計で6年務めたA氏も出所時にもらったのは8万円ほどだったという。

「刑務所に長くいても、アパートを借りる金なんか貯まりません。自分は迎えに来てくれた人がいたからいいですけど、それがいなかったら、地元へ帰る金とかホテル代、メシ代とか、数日で消えてしまいます。だから、無銭飲食で逆戻りという気持ちも、わからなくもないのです」

ここ数年でもっとも寒いと言われる今年の冬。刑務所を年末年始のホテル代わりにと思う受刑者は、今後も増えていきそうだ。

 

 

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