ブレット・グレース⽒は、近⽇リリース予定の限定マガジン「I HAVEN’T THE
SLIGHTEST IDEA」からのエッセイ「Avalanche」の中で、「ロサンゼルスは、⼀番
明るい⽇でさえ⼀時的なものだと理解している」と書いている。彼⾃身、ロサンゼルス
に住む多くの住⺠と同じように他の地域から移住してきた⼈間であるが、彼によれば
L.A.⽣まれでも、移住者でもそれは同じ現象なのだそう。そう、 L.A.は今も昔も⼀時
的な場所なのだ。
午前6時30分、イアン・シュレーガーが経営するニューヨークの⾼級ホテル
「Public」の琥珀⾊に輝くロビーで、ブレットと⼀緒に座っている。 彼は友⼈がロ
ンドンで挙げた結婚式から帰ってきたばかりで時差ぼけの状態だが、コーヒーショップ
は朝7時までオープンしない。 ブレットは「僕はいつも時差ぼけだ」と⾔いながら、
照れくさそうにレッドブルを飲みながら⾃分の滑稽さに笑っている。 ブレットは、⼀
⾔で⾔えば頑固でおかしい」⼈だ。 「⼈⽣の不条理さを理解できない⼈とは、決して
友達にはなれないね。たとえば、僕はとんでもない⼈が部屋に⼊ってきたときに振り
返って「なんて⾯⽩いんだ!」と爆笑するような⼈と⼀緒にいたい。とんでもないとい
うのは、その⼈が着ている場違いな服かもしれないし、振る舞いや⾔葉遣いかもしれな
い。 そんな⼀瞬が引き⾦となって、残りの夜の時間を楽しくさせてくれるわけだ」⼈
⽣の不条理を観察し、記録するには、(⾃称)おかしな⼈が必要なのかもしれない。
「それが私であり、私の仕事だ」とブレットは断⾔する。「あなたは何をしている⼈で
すか?」という恐ろしい質問にやっと答えが出た。
開店準備中のバリスタが不憫に思ってエスプレッソショットを2杯渡してくれようとす
ると、ブレットは「ああ、大丈夫ですよ」と気さくに答えるが、どういうことかエスプ
レッソ 2杯は店のおごりになった。ところでブレットは「存在しない本」と呼ばれるも
のを書き続けている。「僕は少なくとも 15年以上、本を書くんだと人に言いふらして
きたが、結局すべてがエッセイ集になって、たくさんのエッセイを書いてきたわけだ
が、まだ本を出版したことはない。ブログなどを持ったことはなく、印刷や製本の技術
が好きなのでマガジンは良い妥協案だと思った。私の書いたものを共有するための印刷
されたもの…そして、友人のリズ・ニスティコ(Revenge Wifeとしてソロ活動し
Holychildのリード・シンガーでもある)が、私自身の文章に加えて、友人たちにも
マガジンに寄稿してもらおうとを提案してくれた。 私は共同作業なら一番良い作品が
できるのは間違いないと思っていた。なぜなら自分を失望させることはどうってことな
くても、友人を失望させることはできないからだ」
では、誰がこのマガジンに寄稿するのか? 「喜んで寄稿してくれそうな友⼈が3、 4⼈
います」とブレットは⾔う。 ランダムな写真、簡単なスケッチ、使われていない曲の
歌詞など、何でもいいから頼んでみるのだそう。 「マガジンは昔からあるものだと思
いますが、僕にとっては⼀番に90年代が思い浮かぶ。今まさにその世界に⾶び込んで
いて、そのコンセプトにとても刺激を受けていますね。 これはどういうコンセプトで
作られたんだろうってね」そこで彼はノートパソコンで映像を⾒せてひと⾔「巧妙かつ
⾮論理的、それが僕の⽬指すところだね」 と⾔った。
早朝の⼩話の前にブレットが送ってくれた作品「Avalanche」は、感情を揺さぶる
パーソナルエッセイで、ブレットのような⼈が常に危機に瀕しているロサンゼルスに惹
かれる理由を、同じように運命的な「⾃動⾞事故」の関係に惹かれる⾃分になぞらえて
いる。「このマガジンの残りの部分は、とにかく、そんなに暗いものではないと思いま
すよ。 僕はもう既に暗さを過剰なくらい取り⼊れたから、僕の好きな「無意味なも
の」を使ってバランスを取らないとね」
I HAVEN’T THE SLIGHTEST IDEA、「でも今「Merrily We Run Far, Far
Away」というタイトルにしようかと考えていたんだが、あと何十回もタイトルを変え
るかもしれないね」とブレットは注意を促す。そんな本作品は、ニューヨークのブ
ティック型出版社Printed Matter Inc.から、 2022年下半期に限定出版される予定
となっている。
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